りんご生産量で実に日本の６割を占める青森。そんな青森にあるりんごの温泉宿「南田温泉ホテルアップルランド」に、2021年１月より『100％りんごジュースが出る蛇口』が登場しました。
リンゴ園を所有しりんご入りの温泉に入れる、まさにリンゴづくしの温泉宿についてインタビューしました。
写真：りんご100個も浮か南田温泉ホテルアップルランドのぶりんご風呂、毎日交換するという。（浮かぶ個数に季節変動あり）
青森県平川市にある南田温泉ホテルアップルランドはりんご園に囲まれた宿。秋になるとたわわに実るりんごの木々ごしに津軽平野の広がりと岩木山を望むことができます。
お宿でもサンふじ・つがる・アルプス乙女などのりんごを育てているそうです。
写真：敷地内にりんご園もあり複数種類のりんごを育てている
湯舟を埋め尽くさんばかりの大量のりんごが浮かぶりんご風呂でも有名です。
そんな南田温泉ホテルアップルランドの斎藤さんに新しくできた『りんごジュースが出る蛇口』を含めてお話をうかがいました。
おんせんニュース（＝以下、おんせん）：
このたび、りんごジュースの蛇口を置いたきっかけや思いつきを教えてください。
南田温泉ホテルアップルランド（＝以下、アップルランドと略記）：
コロナ禍の影響で、スタッフの意識が変化し、ピンチをチャンスに捉えた新しいサービスや取り組みのアイデアが生まれるようになりました。
その１つが新しいおもてなし、リンゴジュースのドリンクコーナーとしての『りんごジュースが出る蛇口』です。
写真：フロントのラウンジに置かれたりんごジュースが出る蛇口
おんせん：
蛇口から出てくるりんごジュースは果汁100％のものでしょうか？
アップルランド：
青森県産りんご果汁100％のりんごジュースです。姉妹会社の「マルジンサンアップル」のりんご果汁１００％のジュースを使用しています。
りんごをそのまんま使用した濁りタイプのりんごジュースになります。ビタミンＣなどの添加物も使わない無添加のりんごジュースなので新鮮なお味を楽しめると好評なんですよ。
なお「マルジンサンアップル」は昭和23年創業のりんごの仲買業の老舗になります。アップルランドはもともと、マルジンサンアップル創業者の葛西甚八が従業員や地元の人のために掘削した温泉なんですよ。
（後で葛西甚八氏についてマルジンサンアップルの公式ＨＰで調べたところ、苦難と波乱万丈、チャレンジに満ちた人生で心揺さぶられました。青森のりんごの立役者にこんな人がいたとは……エモい！）
おんせん：
湯船にりんごがいっぱい浮かんだ温泉、つまりりんご風呂も圧巻です！ １つの湯船に大体何個くらいのりんごを浮べていますか？
アップルランド：
りんご風呂は、大浴場・苹果(ひょうか)の湯にあります。苹果(ひょうか)とは中国語で「りんご」。男湯、女湯それぞれ１００個程度のりんごを入れています。その年のりんごの収穫次第で少なくなる時もあります。
写真：およそ100個のりんごが浮かぶ苹果(ひょうか)の湯
おんせん：
１００個！……ものすごく贅沢ですね～温泉に入れたりんごは、どれくらいで交換するものなんですか？
アップルランド：
毎日交換します。お湯に浮かべていると、りんごが柔らかくなり実が崩れやすくなってしまうので。
おんせん：
男湯と女湯でりんご１００個ずつを毎日交換！贅沢すぎる～（悲鳴）湯船に浮かんでるりんごは、水道で洗うなどすれば、食べられるんでしょうか？
アップルランド：
かじられたりんごをよく見かける事はあります（笑）浮かんでいるりんごを召し上がることはお断りしています。もし食べても温泉の熱で柔らかくなりすぎて美味しくないと思います……。
写真：思わず食べたくなる気持ちはわかる
おんせん：
お湯に入れると柔らかくなるんですね。温泉にりんごを入れることで美容や健康への効能が増したりするのですか？
アップルランド：
当館の温泉は源泉かけ流しで、pH8.2の塩化物泉になります。もともと弱アルカリ性で美肌の湯なのですが、りんごを入れることで、りんごが持つ甘い香りが漂い、香りに癒されます。
さらにお湯に溶け込んだりんごの有機酸が新陳代謝を促し、疲労回復と美容に効果があるといわれています。
おんせん：
香りのいいりんごの温泉、お肌にもいいんですね。りんご風呂はいつも楽しめるのですか？
アップルランド：
りんご風呂は１年を通して楽しめますよ。
おんせん：
りんご風呂のりんごは食べられないとのことですが、美味しいりんごを存分に味わいたいです！
アップルランド：
もちろん味わっていただきたいです！まず、ウェルカムフルーツとして客室にりんごをご用意しております。
当館でご提供しているりんごは全て姉妹会社「マルジンサンアップル」の県産りんごで、食べごろのものを冷蔵庫でほどよく冷やしており、かじった際に「シャリッ」と最高の状態で召し上がれるように準備しています。
写真：お客様を食べ頃に冷やした新鮮なりんごでおもてなし
「こんなりんご初めて食べた」
「スーパーに売っているものより格別に美味しい」
と特に、遠方からお越しになられたお客様は大絶賛されます。
おんせん：
りんごを使ったオリジナル料理も楽しめるんですよね！例を教えてください。
アップルランド：
「りんごの挟み揚げ」といって、餃子の皮ほどの薄さに輪切りにしたりんごに青森名物のホタテのすり身を包み油で揚げます。ホタテの旨味に香ばしくなったりんごの甘味が加わって美味しいですよ。
また「りんご器グラタン」も好評です。こちらはりんご一個を器状にくりぬき中にホタテ入りのホワイトソースを詰めて焼き上げます。焼きりんごとクリーミィな味がとてもあう逸品です。
写真：焼きりんごの甘酸っぱい香ばしさにホワイトソースがマリアージュ！りんご器グラタン
おんせん：
デザートやドリンクでもリンゴを楽しめますか？
アップルランド：
当館オリジナルの「りんご生ビール」は女性に人気です。１００％のりんごジュースと生ビールを合わせたドリンクです。無添加ならではのフレッシュなりんごの風味がビールと合って非常に飲みやすいと好評ですよ。
また、オプションでアップルパイ作り体験があります。残念ながら現在はコロナ禍の影響でスタッフとの接触を避けるためにお休みしていますが……。
お子様連れのご家族でアップルパイ作り体験をして、翌朝チェックアウトの際はお土産としてお渡しすると大変喜ばれていました。
もちろん、体験で作ったアップルパイを焼きたての状態で夕食のデザートでお出しすることも可能でした。
おんせん：
自分で作ってた焼きたてアップルパイがデザートなんて楽しい！早くコロナが終息して復活してほしいです……
おんせん：
りんご料理以外にも「津軽料理遺産」認定郷土料理など、食にはこだわりがあるとＨＰで拝見しました。「津軽料理遺産」とは何ですか？
アップルランド：
津軽地方に昔から伝わる郷土料理の中でも、特に後世に受け継ぎたい料理139種類を津軽料理遺産として認定しているものになります。
今もなお、津軽の人々のソウルフードとして好まれております。当館では津軽料理遺産の中から いがめんち・けの汁・貝焼き味噌等をお出ししています。
写真：ほたての貝殻で貝と味噌を焼く郷土料理・貝焼き味噌
おんせん：
他エリアにはない津軽ならではのお料理が味わえるのは温泉好きの旅人には嬉しい！そういえば、朝食のカレーが美味しいそうですね。
アップルランド：
「平川サガリカレー」ですね。地元・平川市のソウルフードであるサガリを使っています。
サガリは牛の横隔膜の一部で焼肉でも人気の部位になりますが、これをカレーとして長時間煮込むととても柔らかくトロトロになるんです。
写真：朝食でも食べられる平川サガリカレー。とろける柔らかさをぜひ
朝食会場とお昼に営業するお食事処でだしていますが、イチオシです。
おんせん：
花館客室からはりんご畑を見渡せるとのことですが、春にはりんごのお花見ができそうですね。
アップルランド：
花館客室は岩木山側と八甲田山側とあります。
りんごの花が見える客室は八甲田山側で、花の時期は目の前に広がるりんごの花と晴れた日には見えるうっすらと雪が被った八甲田山脈との景色が最高の眺めですよ！
りんごの花は毎年５月の１週目から２週目に開花します。
写真：５月の１週目から２週目に開花するりんごの花（イメージ）
岩木山側は岩木山を望み、こちらも年間通じて素晴らしいですよ。
写真：雪を頂いた岩木山を望む客室
イギリスの諺に由来する「一日一個のりんごは医者を遠ざける」。
南田温泉ホテルアップルランドを創業した葛西甚八氏の晩年の健康法も「一日一個のりんごを毎朝食べる事」だったそう。
お話をうかがった斎藤さんも「青森のりんごを是非ご賞味いただければ幸いです」と結んでいます。
「コロナ禍という逆境に立ち向かい、少しでも明るく元気が出るようなサービスをお客様に提供していきたい」と生まれたりんごジュースが出る蛇口。
美味しくて温泉に入れても美容にもいい……そんな青森りんご尽くしのお宿のパワーをリンゴで受けとる旅って自分も元気になれそうですよね。
願わくばこの美味しいリンゴを使ったアップルパイ作り体験も復活するよう、コロナの終息を願うばかりです。
（取材・文：やまめタグ、編集：hotspring727）
写真：お子様連れのお客様へサービスしているお子様お風呂グッズや紙おむつなど
