南アルプスと伊那山地に挟まれた山あいに位置する大鹿村。日本で最も美しい村連合に加盟し、長い年月をかけて自然と人間の営みが作り上げた美しい日本の姿を残しています。その村の奥、山々に囲まれた小さな旅館「湯元山塩館」のヒミツと魅力をたっぷりお伝えします。
南アルプスと伊那山地に挟まれた山間に位置する大鹿村。春は桜、夏は新緑、秋は紅葉、冬は雪と、長い年月をかけて自然と人間の営みが作り上げた四季折々の美しい姿を残しています。
大鹿村の奥、山々に囲まれた秘境に佇むのが「湯元山塩館」です。
山あいなのに『塩の湯』が湧くという摩訶不思議な温泉旅館で、無色透明で塩分を多く含んだ、体の芯から温まる湯が自慢です。
写真：雰囲気のある旅館です
古くから愛される大鹿村の鹿塩温泉には、古事記にも登場する建御名方神が「鹿狩りをしている際に鹿が塩水を舐めているのを見て発見した」などの開湯伝説が残されています。
「山塩館」の自家源泉は地底約7000ｍの極深地から湧き上がり、それは少なくとも2万年以上前の塩水と考えられているそう。遙かなる時を越え、枯れることなく渾渾と湧き出る不思議な塩の泉。それが鹿塩温泉の最大の魅力なのです。
写真：お湯に浸かりながら四季折々の風景が楽しめます
泉質は「含硫黄－ナトリウム塩化物強食塩泉（弱アルカリ性高張性冷鉱泉）」。塩分が強く保温性に優れ、湯冷めしないさらりとした湯上りが特徴です。特に冷え性や乾燥肌の人にはオススメ。
檜の湯、天然石の湯の2つがあり、日替わりで男女入れ替えとなっています。露天風呂はありませんが、大きな窓から四季折々の山の景色が楽しめます。
写真：「檜の湯」。大自然の景色を眺めながらのんびりゆっくり浸かれるのがいいですね
檜の湯には、心臓に負担をかけない寝湯があります。のんびりと寝湯付けで窓からの山の四季が楽しめます。一方、趣のある天然石の湯は、大鹿村の天然石があしらわれた浴槽。無循環・無加熱、源泉注入式の源泉浴槽があります。
海がない長野県大鹿村の山からは、なんと！天然の塩が採れ、それを「山塩」と呼んでいます。
写真：源泉を焚き上げて造られる山塩
その山塩の元は、鹿塩温泉の源泉（塩泉）。朝から夕方までじっくりと煮込むと、塩分だけが残り、塩が精製されます。
写真：塩づくりの釜
精製される量はわずか3％（1リットルから30グラム）ほどとかなり少量。大量生産ができない地道な作業で、幻の塩とも呼ばれています。
山塩は、海水から造る塩と比較すると、苦味やべったりとした印象を与えるマグネシウム（にがり成分）成分が極めて少なく、とてもさらりとした塩です。角のない柔らかな塩加減が特徴です。
写真：「塩爺」と呼ばれる職人が精魂込めて塩づくりをしています
「山塩」は伝統を受け継ぐ職人、塩爺が手塩にかけて造っています。新雪にも似た真白な「山塩」は、館内でも販売しています（1袋／50グラム600円 1人1袋限定）。
写真：温泉で販売している貴重な塩
地元の採れたての食材を田舎ならではの味わいで楽しんでもらいたいと、旅館の家族全員で調理などのおもてなしをしています。「自分たちが本当に美味しいと思うもの」を、化学調味料や食品添加物を極力使わない素朴で優しい味わいの料理が並びます。
夕食は、自家菜園の野菜や地元の食材を使ったと昔ながらの郷土料理。山菜や茸のほか、野生鹿や猪、渓流で育った岩魚やあまごなどの山の幸がずらり！
素材が持つ旨味を引き出すのは、塩爺が作る自慢の「山塩」です。そして、はざかけ熟成された旨みたっぷりのはざかけこしひかりは最高のご馳走です。
写真：自慢の塩を付けていただくとより美味
朝食は自家菜園野菜や山で採れた天然食材を使用。田舎味噌のお味噌汁、自家製漬物、それに山塩で味わう田舎造りの大鹿豆腐も人気です。シンプルながらも伝統的でやさしい朝食が、旅人の心もおなかも満たしてくれます。
写真：春には食べたい山菜の天ぷら
客室は、モダンなデザインにリニューアルした新館と、昔ながらの落ち着いた雰囲気を楽しめる本館があります。
写真：落ち着いた雰囲気の新館の客室「ほのあかり雲母」
部屋の位置によって、山桜やイチョウなどの木々、いろいろな質感の異なる白一色の冬景色など、季節によっても楽しめます。
写真：手入れの行き届いた昔ながらの和室
四季折々で異なる表情を見せる大鹿村の塩鹿温泉。海も遠い山あいなのに、「鹿狩りをしている際に鹿が塩水を舐めているのを見て発見した」という伝説もちょっとロマンがありますね。塩が造れるくらいの温泉、一度は浸かってみたいですね。
（まとめ・文：吉川、編集：hotspring727）
