焼酎王国・九州。
中でも鹿児島・宮崎を中心とする芋焼酎は、個性的な芋の甘い香りが「お菓子みたい」と焼酎初心者を誘うことも多いですね。わたくし、中の人もそのクチ、焼酎は芋から入りました♪
そんな魅惑の芋焼酎、実は年に3か月しか作られないことをご存じですか?(私は最近知りました)
原料の芋は、水分を多く含む「野菜」であるため、穀類である米や麦と違って長期保存が効かない。
ゆえに、さつま芋の収穫時期に短期決戦で仕込んでしまう必要があるんですね~
でないと芋がダメになってしまうから。
つまり芋焼酎の新酒は芋の収穫シーズンである秋だけのものなんです。
芋焼酎のメッカである鹿児島・宮崎では、この期間限定の「新酒」をいつもの焼酎とは違った季節ものとして楽しむ習慣があるらしい。
「新酒の味?普通の焼酎とはだいぶ違いますよ。鹿児島では新酒を毎年楽しみにしている人もいるくらいですよ」
それにしては、焼酎の新酒は全国区ではマイナー。
日本酒の新酒やボジョレーヌーボーのように知られてませんよね。
同じ九州なのに、福岡ですら、出会えない(もしかしたら通な店にはあるのかもしれませんけど)。
……ということで、温泉ニュースの企画として思いついたのが「南九州・芋焼酎の新酒と源泉が味わえる温泉旅館」。
他の媒体ではやってないし、我ながらネット記事にしてはいい企画じゃねw?
な~んて自画自賛したのだが、情報を調べているうちに、いきなり壁にぶつかった!
芋焼酎の新酒を出しているお宿が意外に少ないのである。
じゃらんや楽天、一休、はては自分ちにある資料を出してきて、酒ぞろえにこだわっていたり、焼酎の利き酒プランがあったり、というような温泉旅館を見つけて電話をかけまくったが、答えはたいてい
「はぁ、新酒ですか~。特に取り扱ってはないですね~」。
なぬ~!
これが日本酒こだわりの宿だったりすると、新酒のシーズンになると近場の蔵の限定新酒を出していたりする。
オーベルジュなんかだと、11月からボジョレー出してたりする。
その感覚ですぐに見つかって10軒程度リスト化できると思ったのだが、思いのほかなかった。
20軒ほどかけて見つけたのは下記の4軒である。
鹿児島県 指宿温泉 いぶすき秀水園
指宿酒造と関係が深い宿でもあり、新酒を11月ごろから出している。
鹿児島県 吹上温泉 湖畔の宿 みどり荘
地元の西酒造と仲が良く、新酒を11月ごろから出している。
鹿児島県 指宿温泉 休暇村 指宿
地元蔵に作ったもらったオリジナル焼酎のボトルを販売。
宮崎県 蔵元 綾 酒泉の杜
蔵元の宿。11月下旬に新酒まつりが行われ、お部屋に1本新酒のふるまいも。
もしかしたら電話を掛けてない宿にも新酒を出している宿があるかもしれないが、とりあえず「芋焼酎の新酒がのめる宿」を10軒ほどリストアップする特集企画はあえなく没となった。
だが、電話調査中、お宿さんの1つに、
「焼酎のことだったら霧島市隼人町にある【樋高酒店】さんに聞いたらいいですよ」と教えてもらった。
さっそく樋高酒店さんに電話をかけたところ、
「芋焼酎は旅をさせられない酒」「時間をかけると味が変わってしまう酒」
であることがわかった。
その変わり方は「誰でもわかります」とのことだった。
樋高酒店に並ぶ新酒。
つまり「芋焼酎の新酒」は、秋の鹿児島や宮崎でしか味わえない、ご当地だけの季節の味だということがより明確になった。
そして話をきくうちに
「これは新酒を、自分で体験しないことには、話にならんな!」
という気持ちがぐんぐん湧いてきた。
……ということで、企画を変更し、
「秋の南九州でしか味わえない芋焼酎の新酒」の魅力をお伝えすべく鹿児島取材を敢行!
数回にわたってコラム連載していきます。温泉からは少しずれるかもしれませんが、乞うご期待!
【特別コラム】秋だけの「青い味」・芋焼酎の新酒を本場鹿児島で温泉とともに味わう
第1回 前書き 意外に少なすぎる!温泉宿で焼酎の新酒が味わえる宿
第2回 指宿酒造で訊いた新酒が旅をできないわけ・11月6日には新酒まつりも
第3回 芋焼酎の新酒が味わえる希少な宿の1つ・いぶすき秀水園宿泊レポ・前編
第4回 32年連続プロが選ぶNo.1のお料理はダシが絶品だった・芋焼酎とのマリアージュつまみは……いぶすき秀水園宿泊レポ・後編