音茶屋は、蔵王温泉スキー場の、蔵王中央ロープウェイと蔵王ロープウェイ山麓線の両方の乗り場のちょうど中間地点にある。訪れたときはちょうどスキーシーズン、蔵王温泉はスキーヤーやボーダーで活気を見せていた。
大きな薪ストーブが燃える店内は、天井が高くて窓が大きいわけでもないのになんだか開放感があった。
テラコッタの床に木造りのテーブル、しっくいの壁を裸電球がいい感じであったかく照らしている。
ステンドグラスに夕暮れ時の光が透過しているのがなんともきれい。
雪の世界のゲレンデから降りてきてここに入ったらなおさらあったかく感じるだろう。
さっそく「音茶屋」のネーミングについてきいてみる。
そもそも音楽祭をやりたくてここにやってきたのだ、とDJ歴24年、店長の斎藤祐一郎さんが答えてくれた。
音響にたずさわるメンバーがここに集まってカフェを作ったのは2017年の今から11年前。
始めた当時は、本格的な中国茶を中心に、音楽好きのメンバーがはじめたお店に使用ということで「音茶屋」という名前になった。
実は中の人は、洋楽に詳しい人がちょっと苦手である。
だって、おしゃれだから気後れするし、それに彼らの「常識」に概ねついていけないからである。
(中の人が記憶できないカタカナとか多いし)。
でも「聴くこと、おしゃれな音楽に囲まれること」は好きなんだけどね。
内心、わからないことをいっぱい言われたらどうしよう、とビビりつつ、
「ここではどんな音楽をかけるんですか?」と聞いてみる。
すると
「そうですね~、幅広いですよ。カフェっぽい居心地いい感じのものから、尖ったところでいうと昭和歌謡まで」
おお、昭和歌謡。斎藤さんは、中の人の音楽素養のなさを見破ったのか、わかりやすいワードを口にした。
「美空ひばりとか60年代頃の懐かしい音楽に、60才すぎの人が反応してくれるんですよね」
美空ひばりか~、中の人より上の世代か。でもたしかに美空ひばりさんが歌うジャズとか、古いけれど、今ではとっても洗練されて聞こえるよな、というのはわかる
(斎藤さんは「サイケの先にあるモダン近未来を感じさせる」と言っていた)
写真:話題と関係ないが、おトイレの中もペーパーの配置からオシャレ!スキー場らしいウェアをかけるフックもかわいくてなごむ
勇気を出して「昭和歌謡の逆になると、どんな感じになるんですか?」と聞いてみる。
「そうですね~、そうですね~ニュージャズとかアンビエントとかチルアウトなものですかね」
……やっぱり、わからん。聴き比べてみればばこんな感じ?ってのはあるんだろうけど、、、
でも、そこから話がなんだか盛り上がり、一昔前の「レコードを掘りに行く」話などしてくれた。
「こうやってね」とラックからレコードをシャシャシャっと素早く連続して取り出す様子をコミカルに楽し気に実演してくれる。
面白そうだけど、中の人にはそもそもカタカナとかアルファベットのアーチスト名を覚えられないのである。
……と告白すると「そういう場合は」と素敵なアプリを教えてもらった。アーチスト名や曲名がわからなくても大丈夫なアプリ(有名らしいのであえてここでは書かない)。斎藤さん、なんていい人なんだ。
ちなみに、こんな音楽談義(談義してないやんwという突っ込みは置いといて)をいつも「音茶屋」でやっているわけではない。あくまでも取材、かつ中の人がしつこく聞いたから教えてくれたのであって、普通のお客様は、静かにメニューを味わっている。
ライブをやることもあるが、いつも、というわけではない。
音茶屋において、音楽は通常ではあくまでも居心地よくするスパイスなみの存在感であり、つかず離れずの存在で心地よくナチュラルな空間に響く。
そう、響き方がとてもいい感じ。
中国茶から始まったという音茶屋のメニューは、今ではバラエティも増えた。
フード系はスキースノボで体を動かす人相手でもあり、がっつりボリューミーを意識している。
夕食時なので、いただいた人気の焼きカレーは、山形牛がごろごろと入っていた。小ぶりのステーキ1枚分くらい入ってるんじゃない?というボリューム感。ご飯+デミグラスソース+山形牛入りカレー+チーズで焼く。がっつりこってりうまい。カレーだけど「肉食った!」という満足感が嬉しい。
食事は地元の山形牛や地元の農産物を使用し、化学調味料等は一切使わないこだわりの味だ。
夜は(昼でも)お酒とおつまみも充実しているが、クラフトビールに合うソーセージも無添加だ。
ダイエット派には山形の漬物4種盛もある。
スイーツもすべて手作り。ベイクドチーズケーキや、ブリュレのように濃厚なプリンが人気だ。
唯一仕入れている「冷やしかりんとう饅頭」、これは尾花沢の「明友庵」から仕入れたかりんとう饅頭をわざわざ冷やしたもの。
「山形ってなんでも冷やすんですよね」。
冷やしラーメンに冷やし肉そば、冷やしシャンプー。それで、かりんとう饅頭も試しにひやしてみた。すると
「別の世界が広がりました」。
試したかったが、焼きカレーでお腹いっぱいでできず。無念。
音茶屋ネーミングの元祖である台湾の烏龍茶は、緑茶・紅茶・黒茶がそろう。ティーポット500円をグループでシェアして味わうのもよい(湯呑1個追加100円)。
季節の果物やハーブを漬け込んだ自家製シロップもある。ソーダ割りなど好きなようにオーダーできる。
これは、蔵王温泉の濃厚な湯を楽しんだ湯あがりに爽やかだろうと思う。
カウンターで売っていた「マルモ」のパン。地元で人気のパン工房「マルモ」から仕入れる。焼きカレーでお腹いっぱいだったけど、これは買って帰る。
笑顔がカワイイあんぱんは、少し塩のきいたハード系生地に粒あんがいい塩梅で好きな味。
このマルモのパンはチーズ五種盛にも使われている。
私は特に音楽や音響に詳しいわけでもないので、もしも「音茶屋」を、取材でなくただのお客さんとして訪れて、食べログとかにレビューを書くとしたら、たぶん「美味しくて居心地いいカフェ」というような感じになると思う。
でももしも、音楽に敏感な人、音響設備に詳しい人、そして音楽の話をお店の人と少しだけしてみたいな……と思ったら、天井近くにTOWAのラインアレー・スピーカーがかかっている。
スタッフが忙しくなさそうなときを狙って、このスピーカーから話を切り出せば、音楽の話で盛り上がれるかもしれない。
山形県山形市蔵王温泉935-24
TEL:023-694-9081
営業時間/定休日
・グリーン期
10:00~20:00/水曜定休
・冬期12/22~
10:00~翌00:00/月1回不定休