知床世界自然遺産の区域内にある唯一のホテル(※1)、ホテル地の涯(地のはて)が営業再開。その名の通り、秘境マニアにはたまらない、北の聖地です。
※1:ホテルとしては唯一。ホテル以外の宿では、同区域内に岩尾別ユースホステル、木の下小屋の2つがあります。
写真:知床半島の深い山に抱かれた、世界遺産区域内唯一のホテル
写真:夕暮れ時の雰囲気も抜群・ホテル地の涯の露天風呂
ひとくちに世界遺産内といっても、どのくらいの自然の中にあるかというと……? こちらの写真をご覧ください。
知床半島の北側、知床横断道路(国道334号線)よりもさらに奥深く進み、知床五湖から内陸の山へ。羅臼岳の登山口にそのホテルはあります。
このホテル地の涯は2017年から閉鎖されていたのですが、今年、2018年の夏から復活しているとの噂。
なにしろ秘境の地ですから、わずかに訪れた人の「おや、閉鎖されているようだ」という声や、「復活しているらしい!」という話しか伝わってきません。
写真:川の流れと風車も特徴のホテル地の涯外観
そこで、おんせんニュースでは、ホテルに直撃の電話取材を試みました。
一旦は閉鎖されていたような、田舎(失礼!世界遺産ですが)の宿だったら、留守にしていることも多そうだし、ちゃんと電話がつながるかしら……との不安をよそに、
「はい、ホテル地の涯でございます」
わーーー! コール1回で出てくれたー! しかも、なんて紳士的な応対なのでしょう。
フロントの三熊さん。こちらが予想もしていなかった、都会の高級ホテルのような素敵な応対をいただき、本当にありがとうございます。
取材は、しれとこ村の渡部さんにご対応いただきました。
ー今年6月から営業を復活されたとのことですが、どういった経緯だったのでしょうか?
「経営が変わり、今は私たち『しれとこ村』が運営しています。ホテルの改装や、料理のリニューアルなど少しずつ進めています。復活に関しては、今までのところ、あまり多くの人に伝えられていなかったので、このように取り上げていただけるのは嬉しいです」
写真:温かみのある雰囲気のロビー
ー復活前と復活後、どんなところが変わりましたか?
「実は、部屋の間取りや内装自体はまったく変えてはいません。例年10月末まで営業、その後、雪が積もり始める12月くらいまでの間で改修を進めなくてはいけないので、本当に少しずつしか変えられないのですが、頑張ってやっていこうと思っています。その第一段階として、まず初年度の今年は、寝心地ということを徹底的に考えました」
ーどんな寝心地のお部屋になったのでしょうか?
「部屋というのは、くつろげないといけません。せっかく旅行で来て、しかもたくさん遊んだ後に、ホテルの部屋に帰ってきてくつろげなかったらそれはホテルとしてどうかと思います。
そこで、洋室はもともとベッドなので問題ないのですが、和室も布団をやめ、シモンズのマットレスを採用し寝心地を重視いたしました。
物凄い寝心地が良いです。
これにより、泉質の良い温泉にお入りいただいた後にゆったり、ぐっすりと寝ることができます。」
写真:広々とした和洋室はさまざまなニーズに応える
ー和室にシモンズのマットレス! それは画期的ですね。
「フットスローもたくさんの生地を見て決めました。
部屋全体のイメージを黄金(こがね)色にしたかったからです。地の涯の雰囲気に合う色というのは、私の中ではダークグリーンとこがね色でした。ダークグリーンは深い森のイメージ、黄金色は、鹿のイメージです。
ホテルの内装は今後、ダークグリーンを基調にしていきたいと思っています。部屋の中は、こがね色。鹿のイメージは、やはり優しいイメージなのでそんな感じです。
ちなみに、フットスローは、金色のベルベットを採用しています。これも少しでも、鹿の毛皮をイメージしました。
そして、湯呑みのコップ、菓子皿、湯沸かしポッド、間接照明、ティッシュケース、ゴミ箱、座布団、アメニティといった小物類など変えられるところは、なるべく素敵なものをセレクトしました。そしてほぼメイドインジャパンです。
作り手さんに直接会いにいき、作ってるところを見せてもらいそこで注文したものもいくつかあります。
メイドインジャパンにこだわった理由は、これからは海外のお客様が圧倒的に増えてくると思っているからです。やはり、海外から来たらメイドインジャパンの方が嬉しいと思うので。
今後もまだまだ色々と変化させていきます。」
写真:その日のとっておきの料理をお楽しみに
ーホームページのお料理のページでは「新メニュー考案中!」となっていましたね。
「そうですね……。実はまだまだ、試行錯誤中でして、その日の仕入れなどによって、いろいろなメニューをお出ししている状況です。自慢の一品などはこれからできてくると思うので、楽しみに待っていてください。」
写真:深い緑に囲まれたワイルドな露天岩風呂
ー露天風呂の温泉の色がグリーンだったり、乳白色のように見えるお風呂もあるようですね。
「温泉は、岩尾別温泉の源泉をかけ流しています(源泉の温度が熱いので加水しています)。なので、色などはこちらで操作できるものではないのですが、日によって、また日の当たり具合などで色が変わります。この温泉自体は復活前から変わることなく、今も現役です」
ーどうもありがとうございました! 若々しいパワーにあふれた、新しい運営陣に心からエールを送りたいと思います。
純食塩泉はリウマチや神経痛に特に効果があるとされていますし、美容にも良いそうです。さて営業再開したホテル地の涯ですが、今年2018年の営業は10月末まで。厳しい冬の期間は休業となります。春が来るのが待ち遠しい!
間に合えば、冬じたく前の知床の大自然を感じながら秘境の温泉へ駈け込んでみるのはいかがでしょう!
(取材・文:前田ゆかり)
写真:シックな灯りでリラックスできる大浴場