温泉好きによる温泉好きのためのWebメディア

【宮城】鳴子温泉の熱で熟成させた新しい味わいの日本酒「一ノ蔵 Madena(までな)」の発売が今年も始まる

鳴子温泉で熟成させた日本酒。
……そんな話をネットで見つけたときは、結構驚いた。
温泉卵に温泉饅頭、そして温泉湯豆腐……温泉が作り出すグルメはいろいろあるけれど、まさか日本酒とは。

日本酒といえば、ちょうど今の時期が新酒の時期。
極寒の時期に醸すもので、南のほうの蔵では、クーラーや氷を駆使してまでつくるということを以前聞いており、高温は大敵だという認識があったから「温泉で温めて熟成させる日本酒」というのにはとても興味をひかれた。

そこで、鳴子温泉で高温熟成させる酒「一ノ蔵 Madena(までな)」について中の人は電話取材を申し込んだ。
一ノ蔵といえば、宮城県の銘醸蔵だ。株式会社 一ノ蔵の永井さんが取材に応じてくれた。

大航海時代、赤道直下で温熟されるマデイラワインにヒント

一番の疑問。
そもそも、寒い時期に作る日本酒をどうして鳴子温泉で温熟させようと思ったのか。

「Madena(までな)の発想は、ポルトガルのマデイラワイン(酒精強化ワイン)になります。マデイラワインは加温熟成させるワインですが、そもそもなぜ加温熟成させるようになったかというと、大航海時代にイギリスとインドを往復した船に積まれていたワインが、赤道付近を通過する際に、暑さで品質が安定し美味しくなったことからといわれています」
(注:現代では熟成に適した保管庫を使用)」

木の樽に詰められたマデイラワインは50℃に達する赤道直下の船倉で何日も自然に熟成された。
それがマデイラワインの美味しさの原点なのだが、それを日本酒でやってみようと思いついたのが、故・鈴木和郎最高顧問だった。彼は大航海時代の浪漫あふれるマデイラワインの製法を日本酒で試してみようと「酒精強化清酒」の開発に着手したのだった。

ちなみに酒精強化とは、醸造過程でアルコール(酒精)を添加することで酵母発酵を止めてアルコール度数と糖度を高めた日本酒であり、その味は甘さ・酸味ともにはっきりとした味になる。

そして赤道直下の船倉にみたてた熟成の場が、まさに一ノ蔵の地元にある、鳴子温泉なのだ。

写真:湯けむり上がる鳴子温泉。(画像:みやぎデジタルフォトライブラリー)

世界を航海する大航海時代生まれのワインにヒントを得つつ、地元の酒米を使い、地元の温泉で熟成させる大崎市の「ご当地」の日本酒業界初の新しい酒はこうして生まれた。

熟成で美しい琥珀色、そしてカラメルのような魅力的な風味が生まれる

鳴子温泉の、どれくらいの温度で熟成させるのか、は企業秘密として明かしていただけなかったが、
Madenaは、鳴子温泉を使った「温室」で半年間ほど寝かされる。

写真は鳴子温泉の熱を生かした貯蔵庫。ここで熟成させる。

温泉からあがる頃合い、つまり熟成完了の頃合いは、人の舌によるテイスティングを繰り返して慎重に決められるという。一様に日数が決められているわけではない。そこに自然熱を使う難しさがある。

「湯上がり」のMadenaは、2年半ほど常温静置しさらに熟成させる。

こうして3年の長きを経て熟成したMadenaは、色が麗しい琥珀色に変化している。
日本酒の世界では3年熟成させた酒を「古酒」と呼ぶからMadenaも古酒の範疇に入る。
味も、酒の中に含まれる糖が、温泉の高温熟成でメイラード反応を起こし、カラメルのような香ばしい風味に変わる。
甘みと酸味の輪郭がはっきりしている酒精強化清酒に、香ばしさと濃厚さという奥行きが加わるのだ。

日本酒にはよく「フルーティ」という表現を使われるが、Madenaの場合は、それがドライフルーツのような濃厚な風味として舌に感じられる。

「新酒はフレッシュな果実のような風味がしますが、Madenaはそれがまるくまろやかに奥深くなっています。人間に例えると若いころは尖っていたのが、30代40代と年を経るにしたがって経験を経て人あたりが丸くなり、人格は深くなっていくような、そんな感じでしょうか」

似合うつまみは、ブルーチーズ!こってり味と相性良!

円熟した酒・Madenaに合うつまみは、意外にもブルーチーズだという。日本酒にブルーチーズ!

「クリームやバターを使ったこってりした味があうんですよ。酒自体が濃い風味を持っているので、通常、日本酒にはあわないようなこってりとした料理にあうのです。逆にあっさりした料理だと料理がMadenaに負けてしまいます」

ワインでもフルボディのものにあわせるような料理と、むしろ相性がよいのだそうだ。

または、レーズンなどのドライフルーツもあうという。
一番のおすすめは食後のチーズボードでデザートワインのようにしていただくこと。まさにマデイラワインのようないただき方だ。
こってりとした味や、ドライフルーツのように乾燥させたことで強くなった風味をもがっちりと受け止めつつ、負けない。温泉熟成の酒にはそんな強さがあるのだ。

そんなMadenaは、昨年2016年に日本商工会議所が主催する第57回全国推奨観光土産品審査会のグローバル部門にて国土交通大臣賞を見事受賞した。
現在、3000本ほどの限定生産、貴重な酒だ。

さて、「Madena(までな)」というネーミングには、3つの由来がある。

①宮城の方言で「丁寧な」という意味の「までな」
②宮城の方言で「待っててね」という意味の「待でな」
③開発のきっかけとなった「マデイラワイン」

出来上がりまでにとても長い時間を待っていてください。
じっくり丁寧に仕上げているので、待っていてください。

……そんなあったかい気持ちが込められた酒を、鳴子温泉の湯が今年もじっくり育てる。

一ノ蔵 Madena(までな)

720ml 5400円

株式会社一ノ蔵(宮城県大崎市松山)
http://www.ichinokura.co.jp/

原材料:米・醸造アルコール・米こうじ
原料米:トヨニシキ(宮城県産)
精米歩合:65%
アルコール分:18度
日本酒度:-55~-35
酸度:4.0~5.0

ネット通販
http://www.jizakeshop.co.jp/SHOP/10603.html

※楽天市場支店もあり

鳴子温泉でMadenaが買える酒屋さん
 
有限会社 倉加屋(くらかや)
〒989-6832 宮城県大崎市鳴子温泉字星沼79-35
TEL:0229-87-2201
営業時間/午前7時~午後8時
定休日/隔週日曜日

有限会社 さとう酒や
〒989-6823  宮城県大崎市鳴子温泉字湯元6
TEL: 0229-83-2451
営業時間: 8:30~20:30

この記事もおススメ!