2017年、NHK大河ドラマ「真田丸」の舞台にもなった・信州上田は別所温泉にある「旅館 花屋」に貴賓室・武家屋敷 桜御殿が誕生したことを、おんせんニュースの記事で紹介しました。今回、その貴賓室・武家屋敷 桜御殿を現地取材してきました。名物の温泉とあわせてレポートします。
写真:見るからに立派な外観の旅館 花屋
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写真:別所温泉へようこそ
宿泊できる武家屋敷がある旅館 花屋へは上田電鉄別所線の終点・別所温泉駅から、徒歩7分ほど、坂道を登っていきます。共同浴場の「大湯」方面への道をまっすぐ上ります。温泉街からは少し離れているので若干わかりづらいかもしれませんが、この道祖神を目印に。
写真:旅館 花屋へはこの道祖神を目印に
道の右手に現れたのは……!
6500坪もの敷地に点在する、建坪1500坪もの木造建築。そのほとんどが、市の登録有形文化財指定という宿・旅館 花屋なのです。
旅館 花屋は、1917年創業。
信州最古の温泉といわれる、歴史の深い別所温泉では、農業のかたわら湯治客を泊める旅籠が数軒ありました。大正時代に入り、ゆったりくつろげる本格的な旅館として設立されたのが花屋の始まりです。
別所温泉の周辺は「信州の鎌倉」とよばれるように、名だたる寺院が点在しており、そういった由縁から地元の宮大工に依頼して建てられました。
大正浪漫漂う、広々としたロビー。棟ごとに渡り廊下で繋がり、すべての客室が異なる間取りで、当時の宮大工の意気込みや遊び心が垣間みられます。
写真:昭和40年代に外装を城郭風に改装したという食事処も立派です
さて、まずは創業100年を記念して造られた、貴賓室「武家屋敷 桜御殿」へ。
移築された武家屋敷というのは、上田城の正面口、二の丸橋のたもと近くにあった「河合邸」。お城の目の前の一等地ですから、かなり上級な武士が住んでいた屋敷だったということがわかります。
写真:床の間の柱も特徴的
そして、お城の警護の意味もあって、敵が来襲した場合に備えたからくりも。
“武者隠し”といい、非常時に備えて、護衛の武士が控えている隠し部屋です。
写真:武者返し。床の間の横の壁の裏側は通常はこのようになっていて……
写真:敵が来たらくるりん!と動かせ、要人を逃がすことができます
この「河合邸」は、上田城跡公園に隣接する最後の武家屋敷だったので、それが取り壊されるというときに保存のため買い取ったものだそう。
現在は有名そば店の「草笛」が立っているところにあったということで、現地を訪れる際はこちらも合わせてチェックしてみるのもいいですね(そういえば、「真田丸」のゴッドマザー的おばあさま「とり」は草笛光子さんが演じてましたね……関係ないとは思いますが、草笛つながりで※中の人・注)。
さて、この旅館の名物でもある、大理石風呂と若草風呂へ。
写真:窓に面して横に広がる若草風呂
大理石風呂は広々とした明るい浴室で、ドーム型の天井やステンドグラスが大正浪漫を感じる優雅な趣です。
写真:優雅な趣の大理石風呂
若草風呂は、その名の通り若草色の石(伊豆若草石)で造られています。
その天然のグリーンの色合いは優しく美しく、眺めるだけでもうっとり。浴槽の底までも若草色です。大きなガラス窓から日差しが差し込みます。
写真:壁面のグリーンとステンドグラスも美しい
これら二つの風呂は、時間帯によって、男湯・女湯として交代で割り当てられます。ぜひ、美しい色合いを堪能するために到着時や朝も含めて入浴を。
写真:浴槽の底まで若草色
さらに、男女別の露天風呂が、上記の風呂とは別に設けられています。
写真:露天風呂への渡り廊下
いずれも宿泊者専用となっているので、ゆっくりと浸かることができますよ。
すべての浴槽で別所温泉の源泉がかけ流しになっており、飲泉も可能。温度調節のため加水または加温もしていますが、湯口の温度が概ね40度前後ということですので、ほぼそのままの源泉を楽しめるようです。
写真:自然の中でのんびりできる露天風呂
ほのかに硫黄の香りが漂う透明な湯は単純硫黄泉。肌あたりもやわらかく体の芯から温まります。弱アルカリ性で肌の不要な角質を取ってくれる効果があるそうです。湯上り後はすべすべになります。
そんな別所温泉の湯をぜひ堪能してみてください!
(取材・文:前田ゆかり 情報更新:2020年4月 前田)