都井岬の夏の風物詩・飛び魚すくいが今年も宮崎県串間市の都井岬沖で行われています。大人も子供も簡単に楽しめて、捕れたての新鮮な飛び魚は全て持ち帰ることができるそうです。飛び魚(トビウオ)というからには、飛んでるところを空中ですくうのかしら?…なんて、ちょっと楽しみな飛び魚すくいを紹介します!
大きな胸鰭を羽ばたかせて70~80mも飛ぶトビウオ
飛び魚(とびうお)には大きな胸びれがついていて、それで海面から飛び出して、空中を飛ぶこともある魚ということで、飛び魚、英語ではFlying fish(フライングフィッシュ)といいます。
写真:鳥の羽のように発達した胸鰭が特徴の飛び魚(トビウオ) ※イメージ写真提供:PIXTA 撮影:yuuyuuさん
飛び魚の飛び方は、跳ねるなんてものではありません。大きな胸鰭を鳥の羽のようにはばたかせて1回の飛行距離、なんと70~80mも飛ぶというから驚きです。
YouTubeでは着地の時に海面をタッチ&GOするように、再び飛行を繰り返して数十秒飛び続け、500mも飛び続けた動画も公開されています。飛ぶスピードは、時速60~70kmともいわれています。自動車なみですね!
アゴ出汁の原料・飛び魚は食べ方いろいろ
そんな飛ぶ魚、飛び魚は食べても美味。
九州ではアゴと呼ばれていて、昔から焼いて干した焼きアゴは汁物の出汁に使われてきました。近年ではパックの出汁がスーパーなどで手に入りますが、最近特に人気のアゴだしの原料が飛び魚です。
生の飛び魚は、お刺身、フライ、塩焼き、天ぷら、つみれ、なめろう、煮魚、蒲焼、から揚げ、マリネなどで美味しくいただけます。淡白な味が特徴なので調理法を選びません。
そんな旬の飛び魚を自分の手ですくってみようというのが、この飛び魚すくいなのです。
宮崎県串間市は宮崎県の最南端に位置しています。志布志湾と日向灘に面していて、国の天然記念物でもある岬馬が生息している都井岬があることでも知られています。
この都井岬の沖で毎年夏の時期に産卵のためにやってくる飛び魚をタモという大きな網ですくうのが飛び魚すくいです。
日が暮れた夜に港を出港します。飛び魚の明りに集まってくる習性を利用して、集魚灯という夜の漁に使用される明りを船に灯します。その灯りを目がけて水面近くに集まってくる飛び魚をタモと呼ばれる大きな網ですくうのが飛び魚すくいです。
写真:集魚灯に集まってきた飛び魚を取る
夜の漁なので夏でも涼しく海の風を感じながら楽しめます。また、網ですくいあげるので子供でも女性でも手軽にできるのが特徴です。
子持ちのトビウオが楽しみ!
地元で飛び魚すくいを開催している遊漁船組合の川崎さんにいろいろ教えてもらいました。
(おんせんニュース以下、お)–飛び魚が飛んでるところを見ることは出来ますか?飛び魚すくいというのは、まさか、飛んでいる飛び魚をキャッチするんですかね。
「集魚灯に向かって大量に集まってくるけん、中には船に向かって飛んでくるものもおるよ。勢いあまって船に当たって死んだり、船に勝手に飛んできて乗り込んでくるものもおる。ただ、漁は海のなかにいるものをすくうとよ」
どうやら自動車なみのスピードで飛んでくる飛び魚を捉えるのはかなり難しいようです。
(お)–産卵のためにやってきた飛び魚は、やはり子持ちなのでしょうか。
「とれるのは子持ち(メス)1:白子持ち(オス)2の割合。子持ちの飛び魚の身は脂がのっていて美味しいよ、卵入りは卵が特にうまい」
とのこと。トビウオのメスに、マコ(卵巣)は15㎝程度のものが2つ入っていて、卵1粒当たりの大きさはカズノコくらいだそう。生の状態だと透明で、加熱するとやや黄色くなるんだそうです。
(お)–飛び魚すくい体験では平均何匹(何キロ) くらい捕れますか?
「平均にすると30匹くらいかな。大人より子どもの方がコツをつかむのがうまくて、たくさんとれる場合が多いごたよ」
(お)–大きさは平均どれくらいのものがとれるのですか?
「40~45㎝のものが多いね。産卵のためにやって来たもんやけん、大きく充実した魚体のものが多い」
写真:でっかいのとったどー!飛び魚=アゴのイメージの人はその大きさのギャップに驚くかも
(お)–地元ではどんな食べ方をするんですか?
「だいたい、刺身・唐揚げ・なめろうかな。そうそう、ミンチにしたすり身をあげた「天ぷら」もよく食べるよ」
子持ち・白子持ちは煮つけにして、食感を楽しむのがスタンダードなんだそう。
「卵や白子が入ったトビウオは、サト醤油(砂糖醤油)で甘辛に煮つけていただくのがこの時期のお楽しみやね。卵は粒粒の食感がうまか。白子のほうも、とろ~ととろける食感が美味しいよ」
地元の漁師さんもこの時期の飛び魚の味を楽しみにしてるんですね。
なお地元の人の中には、イカの刺身と飛び魚の卵(生)を塩漬けにした、子持ち塩辛を作る人もいるらしいです。お話きいててとっても美味しそうだと思いましたが、販売はしておらず、個人の家庭料理だそうです(残念)。
捕った飛び魚は全てお持ち帰りOKです。ただし、クーラーボックスや氷などは持参してください。
なお、近隣には捕った飛び魚を調理してくれる宿泊施設もあります(※宿泊客向け)
串間市役所の観光課によると、都井岬の民宿・都井岬国民宿舎や海洋荘、黄金荘で、宿泊のお客様を対象に無料で調理サービス可能とのことでした。宿泊予約の際に調理のお願いもしておくといいかもしれませんね。
面白そうな、飛び魚すくい。期間は2019年6月1日(土)~10月31日(木)の間で、漁の時間は約1時間くらいです(時間延長応相談)。詳しくは下記ホームページを見てください。
川崎さんによると「太平洋の金魚すくい」とキャッチフレーズをつけようとした、というほど、入れ食い状態になることも多いらしい飛び魚すくい。
自然が相手なので、不漁の場合があってもご愛敬。大漁のときはどんな料理で美味しく食べようかと悩んで、不漁のときには是非、次回こそは!とリベンジを誓いましょう!
(まとめ・文:えこぴ 情報更新:2019年7月 Ai)
写真:写真ではわかりにくいが、照らした海面に飛び魚がうようよいる