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【福島】福島の彩り豊かな自然の中で優しい時間を。びっき沼の畔に佇む古民家のカフェ●空cafe

吾妻連峰の中腹に秘湯が点在する土湯温泉郷に至る道といえば、土湯バイパスを思い浮かべる人がほとんどだろう。でも、時には旧国道を走ってみて欲しい。静かな森の中を通る道は、気候の良い時期なら窓を開けてゆっくりと走りたくなるはずだ。

そんな道の両側の緑が途切れたところにぽっかりと現れるのがびっき沼。びっきとはカエルのことで、その名の通り、ここにはモリアオガエルがたくさん住んでいるという。
空cafe」はこの沼から道を挟んだ小高い場所にある。

福島県 土湯温泉 空カフェ 空cafe

写真:スロープを上がったところにはこんな看板が

池の畔の駐車場に車を停めてスロープを登っていくと、想像以上に大きな木造の家屋が現れた。
建物の前は広場のようになっていて、涼やかな風の中に鳥のさえずりが響いている。
樹齢を重ねた木々の上に広がる空を見上げ、山の空気を深呼吸してから、玄関の引き戸に手をかけた。

福島県 土湯温泉 空カフェ 空cafe

写真:大きな窓が印象的な建物。細いヒールの靴だと土間にカカト突き刺さってしまうので入口にはきかえ用のスリッパが用意されている

築100年以上の民家が訪れるものを温かく包んでくれる

古民家をリノベーションしたというカフェの多くは、外観だけを残して内部は完全に新しく造り直していたりするが、「空café」は違う。

「この家は築100年以上で、夫の実家の所有だったのですが長く空家でした。でもある時、びっき沼の水芭蕉を見にいらしたお客さんにここでお茶をお出ししたんです。それがきっかけで、カフェを始めてみようということになって」と、店主の阿部典子さん。

しかし、阿部さんはこの家を“古民家風”に改築するつもりはなかった。
床を抜いて土間部分を広く生かしたのが最も大きな変更で、あとは必要な修理を施した以外は、ほぼ昔のままで使っている。

福島県 土湯温泉 空カフェ 空cafe

写真:山の中なので、結構長い間ストーブが活躍

リノベーションは、プロでないと難しい部分は地元の大工さんに頼んだが、基本は家族で行った。太い梁や柱が縦横に配され無骨さの中に安心感を醸しだす空間に、周りの山林の間伐材で作ったというテーブルや棚が、元からそこにあったかのように溶け込んでいる。

これはきっと阿部さん一家が、便利さや洒落たコンセプトを優先させるのではなく、この家がこの家らしく在り続けられるようにと考えながら改装を行ったからだろう。

長い間、風雪に耐えてきた家がこれからも人とともに生きていく、そんな風に思える場所だからこそ、ここでは誰もが優しい気持になれるのかもしれない。

福島県 土湯温泉 空カフェ 空cafe

写真:古いものが古い家に溶け込んでほっとする空気をかもしだす

時間や手間を惜しまず作られたカフェメニューの楽しみ

空caféの魅力は空間だけではない。
自家製のケーキやほのかな酸味で身体を潤す酵素ジュースといった女性が喜びそうなメニューもとても美味しいのだが、コーヒーの味にも驚かされた。苦みとコクのバランスが良く、雑味を感じない。鼻腔に抜ける香りにかすかな甘さの余韻がある。

福島県 土湯温泉 空カフェ 空cafe

写真:香り高いコーヒーには自家製のペストリーもよく合う

実は温泉地では、水質のせいか美味しい珈琲に出会えることは意外に少ない。この味を知った以上、土湯温泉の行き帰りに訪れてしまいそうだ。

「自分たちで育てた野菜をたっぷり使っています」という月替わりのお昼ご飯も人気で、これを目当てに来る人も多々。

そして、阿部さんが「美味しいけど、摘むのがすごく大変(笑)」という自家栽培のブルーベリーを使ったメニューもお見逃しなく。添加物を使わないジャムやシロップは瓶入りが販売されていて、おみやげにできるのもうれしい。

福島県 土湯温泉 空カフェ 空cafe

写真:ブルーベリーのジャムやシロップ。濃厚なのにくどくなく、とても美味。

いつも変わらずここにある、豊かな自然と心地良い時間

ナチュラルな色合いで掌になじむコーヒーカップをはじめ、ここでたくさん使われている阿部さんの作品にも惹かれるが、あの震災の時も空caféの建物はびくともせず、器たちも割れたりしなかったのだという。

それにはなにかの意味があると思ったし、誰かの役にたてることがあるなら、と、阿部さんは震災後かなり早くに空caféを再開した。

今もその時のことを、「混乱が続く中、ここでのひとときだけは、なにも変わらず、それがとてもうれしかった」と語るお客さんも多い。

そんな人たちが楽しみにしているのが、基本毎月の最終日曜日(ただし7月はなし)に開かれるマーケット。毎回テーマがあって、アーティストの作品やとっておきの品物が並ぶ。
ほかにもイベントが開催されることがあるので、出かける前にはブログでチェックしたい。

福島県 土湯温泉 空カフェ 空cafe

写真:木の温かみにあふれた店内。手作りの雑貨なども販売している。

冬期は休業で、オープンは例年4月中旬から11月20日頃までだが今年は4月1日~11月23日まで営業する。

水辺に憩う白い小鳥たちのようにびっき沼を彩る水芭蕉や、窓の外一面に咲きみだれる桜が終われば、鮮やかな新緑の季節。
梅雨の頃に花開く紫陽花は秋まで咲き続け、やがて山が紅葉に染まって、空caféの一年が終わる。

福島の美しい自然の中に身を置く幸せを感じられる空caféの時間。
土湯温泉とあわせて体験してみてはいかがだろうか。
(取材・文:まつもとようこ  情報更新:さこ 2020年3月)

福島県 土湯温泉 空カフェ 空cafe

写真:窓際の長いカウンターは特等席。酵素ジュースに陽射しが映えて。


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