2016年8月末にOPENしたばかりの「おやど森の音(もりのね)」。
もともとは保養所だったところを、同じかみのやま温泉にある名旅館「日本の宿 古窯」がプロデュースして生まれ変わらせたまだできて半年ほどの新しいお宿です。
「おやど森の音」があるのは、かみのやま温泉駅からタクシーで5分ほどの閑静な高松葉山地区。木々に囲まれた小高い丘の上に建っています。14室と決して大きくないのが逆に心和ませてくれます。
冬・2月だったので、到着すると笑顔のスタッフとあかあかと火が燃える暖炉が出迎えてくれました。温かさと、香ばしい良い香りに出会い、寒さでこわばっていた体がゆるむひととき。暖炉の向こうの大きな窓には雪景色が見えています。
「この宿、好きだ」と、まだお部屋に案内されてもいないのに直観的に思いました。
このレポートは、最初に思ったこの直観が正しかったことについてのディテイルをひたすら解説していく感じになります。
到着して出されたのが、ベイクドチーズケーキ。
これが、濃厚でものすごく美味しい。熱いほうじ茶と一緒に出されたけれど、フルボディのワインなんかにもあいそうな大人のうまさ。暖炉で火を眺めながらいただくのにまさにぴったりなおいしさ。もちろん手作りです。
いきなり寛ぎまくりです(笑)そこへご挨拶してくださった斎藤支配人(若い!)が「本日は、偶然にも女性のお客様ばかりなんですよ」
と教えてくれました。
たしかに、このシックな落ち着いた自然色でまとめられた、大人の雰囲気の空間は、女性が好みそう。(華やかなのを女性好み、と勘違いしている人もいますが、旅する年齢の女性は、90%以上こういう雰囲気が好きだと思う)
女性好みの雰囲気とは言え、だいたいはカップルのお客様が何組かいらっしゃることが多いらしいですが、偶然。(落ち着いた大人カップルのデートにもいい雰囲気なのです)
ラッキー♪ 女性ばかりということは、大浴場がどちらも女性の使い放題ということです。いい日に泊まったものです。
暖炉の近くにさまざまなドリンクが用意されていました。
「こちらはフリードリンクコーナーとなっております」
フリー=タダ。コーヒーやお茶、水はともかく、ビールとか焼酎、果汁100%ジュースとかありますよ!本当にっ?
「あの~、私はやりませんけど、ビール何本も飲んじゃったりとか……」
「大丈夫ですよ」(にこっ)
なんという太っ腹!
嬉しくなって、思わず全種類飲んじゃおうかな~と思ったのですが、この後の夕食でワインが美味しくすすみすぎて(笑)ハーブ水をいただくにとどまりました。この日の、レモンバームのハーブ水は爽やか。
このフリードリンクは深夜0時まで用意されているとのことです。お部屋に持ち帰って飲んでももちろんOK。
朝は朝で、ミルクなども用意されています。
14室のお宿なのに、お部屋以外の空間が、「ものすごく」充実しているのが森の音の特徴といっても過言ではありません。到着時に寛いだラウンジは、暖炉が吹き抜けになっているのですが、2階のこの吹き抜けのまわりは、やはりカフェみたいなフリースペースになっています。
暖炉の煙突の輻射熱を利用した暖房であたたかです。本棚もあり、畳の個室も好きなように使っていいフリースペースです。
「ここで仕事(ノマド)できそうだな~」なんて思ってしまうのは私が貧乏性だから(笑)全館フリーWiFiなので可能です。パスワードはチェックインの時に教えてもらえます。
館内には、柱のようにして白樺やブナの木が自然のままの姿で無垢材の床と天井をつないでいます。まさに室内に「森」のカフェを体現したよう。
そして、不思議なBGMが常時流れています。……常時といったら語弊があるかな、基本静寂です。しかし、時々思い出したように、音が鳴る。
古時計の音のような、あるいはお寺の鐘をイメージさせるタイミング。
空間に、時を告げる、という感じで流れます。音はガラムのような。お宿のスタッフにきいても不明でしたが弦楽器(だとしたらチェンバロかも)を使ったオリジナルBGMだとのことです。
もしかしたら静かな森の中で、時々葉っぱが落ちる「かさ」という音をイメージしているのかもしれません。
客室へご案内。今回泊めていただいたのはバス付のお部屋。
和室に低いベッドが置かれています。木の実のドライフラワーと布、陶器を使った床の間のしつらえがおしゃれ、というよりもはやアートです。
幅の広いふわふわおふとん。
洗面スぺ―スがやや暗いかなーとおもっていたら、クロゼットの中に見つけた折り畳み三面鏡。
これがあれば、窓際で座ってメイクもできるので便利!
なお、電話の代わりにタブレットを渡されます。電話にも、館内案内にもなる最新グッズです。
暗くなってきました。雪洞の中に、キャンドルを灯してくれるのが、南から来た旅人には嬉しい。
この雪洞、実は「屋根から落ちた雪」を利用しているのだそう。
そんな遊び心にほっこり心和みます。
夕食前に温泉入りたい。
温泉へは大きな籠を持って出かけます。浴衣の代わりに館内着が用意されています。ボタンで留めるパジャマタイプなので寝乱れることもなくゆったり過ごせます。
森の音の温泉は2か所。保養所時代からあった温泉とあたらしく作ったものと2か所あり、朝夕で男女入れ替えます。
木漏れ日が心地よい「陽」は内湯。熱めとぬるめの2種類の温度の湯船に、ちっちゃな「ナノミストサウナ」がついています。木の香りとほんわかした温度に癒されます。
写真左:朝の「陽」からは。雪景色を眺められました。
写真右:源泉かけ流しの湯を楽しめる「月」
「月」はその名の通り、夜空を望む露天風呂があります。露天風呂ではかけ流しのお湯がとっても気持ちいい。
女性は通常はチェックインから夜24時までなのですが、「女性貸切状態」を利用し、朝もここに入りました。
シンプルながらライティングも凝っている脱衣所。
写真:脱衣所と「月」にあるレインシャワー。
2016年8月に測定したばかりの成分表によれば弱アルカリ性のナトリウムとカルシウムを含む硫酸塩泉でお肌に優しいお湯です。
温泉に入って温まったら、いよいよディナーです。
くるみの木のテーブルが並ぶダイニングにキャンドルの火がともり、とってもとてもいい雰囲気。お腹がすいてきます。
夏ならば木々に面したテラスが開放されるんだとか。
こちらでいただくのはフレンチに和をとりいれた、地元素材の創作料理。
彩り・香り・味ともに、洗練されたお料理です。
野菜をたっぷり使っていて体によさそうな感じなのも女性に人気の秘訣かも。
アミューズには山形でよく食べられる菊も。きのこの煮物には「ヒラタケ・イグチ・ナメコ」の3種。
「イグチってなんですか?」という質問にも、イケメンのスタッフが感じよく答えてくれます。
(アミタケというきのこだそうです)
ガラスのドームに煙が入った、謎めいた料理が登場。
中からは、香ばしい煙とともにブナで燻したサーモンとチーズがあらわれました!キューブがかわいい!
玉手箱のような演出が素敵です。
写真左:メインは肉2種類!山形牛のステーキと鹿肉のロースト
写真右:器まで食べられる鴨の温野菜サラダ。ホワイトバルサミコのソースが爽やか。
鴨のお料理に、朝顔のような彩りの美しい野菜で彩られた甘鯛のポワレ、と目も楽しい料理が続きます。
メインはがっつり肉2種、山形牛のステーキと鹿肉のロースト。鹿肉にはピノノワールのマスタードが添えられています。これが赤身にあう!
ここまででスパークリング・地元高畠ワインの白(ジャパンワインチャレンジ受賞など多数)をいただいていましたが、
肉2種類とくると赤がほしくなります。地元のかみのやまワイン「ドメイヌ・タケダ ベリーA古木」をいただきます。
なお森の音は一人旅OKなのですが、これら地ワインもすべてグラスで用意されているのも嬉しいところ。
ソムリエおすすめのワインは常時7種類ほど用意されているのだそうです。
日本酒もありましたが、ここの料理にはやはり、ワインが似合うかな、と思いました。
〆は山形のブランド米、つや姫の炊き込みご飯。ものすごく美味しかったけど、ここまででかなりボリュームがあったのでたくさん食べられなかったのが心残り。
夕食後は暖炉のあるラウンジで、雪洞を眺めながらコーヒー片手に寛ぎます。
先に食事を済ませた女性グループも暖炉を囲んで楽しそう。
一人旅なので暖炉わきのこの空間で読書とかいいなあ……なんて思ったのですが、お腹いっぱいワインと料理を堪能したのと、温泉で温まったのとで、早く眠くなってしまいました。ふわふわ布団でぐっすり眠りました。
温泉に泊まった嬉しさはやっぱり朝風呂ですよね!掃除とか考えなくていいし、なんといっても窓の外に雪景色が見えているのが嬉しい。雪景色の内風呂に入ったら、昨日の源泉かけ流し露天にも入りたくなってハシゴしました(笑)
さて、温泉でいい感じでお腹をすかして、朝食。
朝食はわずか14室のお宿とは思えない贅沢な仕掛けが。
1.朝食はハーフバイキング。個別の朝食「森の音パレット6品」だけでも十分に見えるのに、卵料理や肉料理などの日替わり料理を好きなだけとってくることができます。
2.お客さんの食事開始にあわせて釜炊きご飯を炊き上げる!
これが、本当に申し訳なかった。朝食開始は7時30分・8時・8時30分から予め選ぶのですが、7時30分は私一人だった!
つまり、私一人だけのために釜のご飯を炊いて待っていてくれるのです。
炊き立て、まるで新雪よりもつやつや白く輝く「つや姫」。釜の中でニコニコ笑っているようです。
昨日腹いっぱい食べたのに、この「つや姫」が美味しくて、3杯もいただいてしまいました。(それでもいっぱい釜の中にはご飯が残っていたけど、あの子(※ごはん)たちどうなるんだろ~な~…と心配してしまいました。
だって、とっても美味しかったから。
朝食の後も、暖炉のそばでフリードリンクを楽しみます。
雪景色が見えるこの暖炉のスペースがすっかり定位置になったかのよう。
ここを離れるのがつくづく名残惜しかったです。
さて、はからずも女子会宿となった「おやど森の音」の一夜。
自然の造形や素材を生かしながらもセンスある空間に加えて、女性が安心して寛げるサービス、ちょっと嬉しい仕掛けがそこかしこにちりばめられていて、女性ばかりになってしまった偶然にも、とても納得がいきました。
女性はやっぱり清潔感がないと、心から寛げない、癒されないって人も多いと思うのですが、その点「森の音」は新しさもあり、多くの人を満足させるのではないでしょうか。全館禁煙というのも癒すために訪れるお宿としてはありがたい。
そうそう、森の音の客室の窓からは、桜の大木がすぐ目の前に見えます。
2017年4月、OPENして最初の桜が宿泊客を喜ばせることでしょう。またこの桜に会いに来るのもいいなあ、と思わせるような素敵なお宿でした。
http://www.mori-ne.com/
山形県上山市河崎字反田848
TEL:023-609-0810
全館禁煙
宿泊料金例)
1泊2食付、2名1室の1名あたり
スタンダードプラン 20520円~
※早割や女性限定などのお得な料金設定もあり
標準チェックイン/アウト
15:00/10:00
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