東北でも珍しい、ジビエ料理のオーベルジュ×畳敷きの温泉が楽しめる「華胥の郷」が2019年5月にオープンしています。
11月15日から狩猟が解禁になるので、新鮮で良いジビエ肉が楽しめるとあって、これからの季節はとくにおすすめとのことです。
写真:箸で食べられるオリジナルのジビエフレンチ。ディナーの一例
ジビエとは、狩猟で得た天然の食肉を意味するフランス語で、ヨーロッパでは貴族の伝統料理として古くから発展してきた伝統料理のこと。
動物の尊い命をいただく代わりに、全身の肉から内臓まであますところなく料理に使い、生命に感謝を捧げるという精神が流れています。また、大地を駆け回った天然の肉は、脂肪が少なく栄養価も高く、狩猟が解禁される冬季限定の貴重なものとなっています。
ここ日本でも近年、ジビエレストランも増えてきているようですが、東北地方でジビエに特化した店ががあまり見られなかったということがあり、オーベルジュ「華胥の郷(かしょのさと)」は花巻近辺では先駆的な存在として、この春オープンしました。
オーナーの佐々木博文さんは岩手県南のこの地域で育ち、子どもの頃からキジ肉や鹿肉、山菜やきのこを食べていたといいます。その豊かな恵みを多くの方に味わってほしいとの思いで、オーベルジュ「華胥の郷」をオープンしました。
写真:落ち着いた和の趣のオーベルジュ
料理を振る舞うのは、本場フランスをはじめ、各所で修業を積み、ジビエも扱ってきた経験のある地元花巻市出身のシェフ。
ジビエ料理が初めての人でも楽しめるようにと、箸で食べられるオリジナルのフランス料理に仕立てています。
また、ジビエがあまり得意でない人のために、メインの料理を牛肉または豚肉に変更することも可能。
野菜は地元の生産者が自然農法で育てたものをなるべく使用しています。
写真:畳敷きのレストラン。温もりのある雰囲気になっている
レストランはレトロで温かみのある畳敷きの空間にテーブル席が配され、椅子に腰掛けるスタイル。
ディナーはアミューズ2品、前菜冷・温各3品、スープ、メインの肉料理2皿、デザート3品まで盛りだくさんですが、ひと品ひと品、基本はお箸で食べられるということで、ゆったりと味わうことができそうです。
写真:シェフが手作りするデザートもこの宿の自慢だ
シャンパーニュなど伝統国のワインから国産ワイン、自然派ワインまで多数取り揃うワインとともに、心ゆくまで楽しめます。
朝食は野菜や果物、雑穀などを使用したオリジナルメニュー。体に優しく、デトックス効果のある食材で、朝から美容と健康面はバッチリです。
さて、宿のある花巻南温泉峡は、元禄時代から湯治場として利用されていたという歴史ある温泉地。
写真:ロビーに入るところから畳敷き。お着きのお菓子もお楽しみに
館内は全館畳敷きで、お風呂も特殊な素材の畳が敷かれています。
もともと建築設計の仕事をしていた妻の昌代さんが、過ごしやすい工夫を凝らしています。
「フランス料理と和風の畳って、ミスマッチのようですけど、お客様にリラックスして楽しんでいただければと思って、そのようにしてみました。おかげさまで、訪れた方にはとても好評です。」とのこと。
写真:書院造りの広々とした和室「春水」はグループ利用にもおすすめ
写真:肌に優しいなめらかな温泉
秋田県北部から産出される十和田石の浴槽、壁面は芳しいヒノキ材を使うなど、随所にこだわりが見られます。
お風呂の畳はクッション性があり、滑りにくく肌触りも優しい素材。また、防水性が高く、衛生面も問題ないということで、気持ちよく利用できそうです。
写真:浴室壁面のヒノキが清々しい
宿名の由来は、中国の故事から。華胥(かしょ)とは中国に伝わる伝説の国。理想郷ということでつけたそうです。
ギャラリー・ショップでは和雑貨も販売。「さわはん工房」の六原張り子、「鳥越もみじ」の籠バッグなど、思わず手にとって眺めてしまいそうな地元の丁寧な手仕事の逸品を、ぜひおみやげにしてみてください。
日本での狩猟解禁が11月15日〜2月15日ということで、宿がオープンして初めての本格ジビエシーズンを迎えます。
自然豊かな温泉地で、ジビエフレンチをゆったり楽しめる宿ということで、秋から冬の旅行にはぴったりですね。
(取材・文:前田ゆかり)