奥羽山脈のど真ん中に位置し豪雪地帯でもある、岩手の西和賀町(にしわがまち)は、季節の変化が激しい程豊かで、またマタギに代表される独特の文化や歴史が残る所でもあります。この西和賀町の奥羽山脈の裾野に息づく広大なブナ林の中、ガイド無しではなかなか立ち入れないエリアをめぐるユニークなトレッキングツアーが行われています。
写真:西和賀町のブナ林
西和賀町のこの地では、国有林を町で(かつては村)権利を取得し、放牧や炭焼に使用していたそうですが、炭焼や放牧が最盛期だったのは今から60年くらい前まで。
今では地元の人も知る人は減り、本当に知る人ぞ知る森になってしまいました。ツアーでは、このガイドがいなければ中々来ることのできない森の中に分け入り、普段体験できない時間を過ごせます。
写真:桂の巨樹。この樹の樹齢は500年を超えていると思われる。登っている人がコビトのようにみえる
写真:拡大したもの。びっくりです。
この写真の巨樹は、桂という木になります。桂は樹齢1,000年近く生きるそうです。この写真の桂は500年以上は生きていると推定されています。中にちっちゃく人が写っているの分かりますか?まるでコビトの様ですね!
ツアーを主催する「ネビラキ」代表の瀬川さんにお話を伺いました。
「ブナ林の足元には、一面ブナの赤ちゃんが芽吹いていました。見上げれば、緑のモザイク。日も当たらなければ雨も落ちてきません。
誰かが倒れて日が射し込まなければ、次なる木は育ちません。この幼木もまたほとんどが十分な日光を得られず秋には枯れてしまうそうです。
毎年無数のブナが芽生え、毎年枯れていきます。
そして、モザイクをなす木はいずれ倒れて席を空け、その空いた席に誰かが座り、座れず死んでいくものもまた新たな苗床になります。
【圧倒的な死】というイメージを通り越して、森全体で一つの命なんだと実感する事ができます。
セミが鳴く5月~8月以外は音もほとんどなく、静かな森です。
ブナの巨樹と交感しながら、自分との対話をする時間にもなります。」との事。なんだか哲学的です。
普段の自分の置かれている環境から切り離された癒し体験ができそうですね。
写真:ブナ木ハンモック。天気が良ければハンモックで読書の贅沢な時間が過ごせる。
「あと、天気が良ければハンモックでくつろげる自由な時間を作りますので本を1冊持ってくると有意義な時間になりますよ」
との耳より情報。おお、これはなんとも贅沢な時間ですね!
写真:倒木の上で遊ぶ。なかなか日頃できない体験。
「興味はあるけど、アウトドアってあまり経験ないんだけど」という方はどうなんでしょう?
「その人の健康状態等を見てコースを定めるので、足腰が丈夫であれば大丈夫ですよ」とのご回答。
雨具は傘でもいいので用意が必要なのと、虫が苦手な方は虫除けがあったほうがいいかもとの事。雨の中のブナ林はとても神秘的だそうです。
靴はトレッキングシューズが望ましいですが、なければ長靴でもOK(泥で汚れても大丈夫なら運動靴でもOKだそうです)。
写真:紅葉するブナ林
このツアーとは別に、今年2019年限定で行われる「錦秋の水没林カヌーツアー」があります。
今年はダムの点検の為、10年に1度の秋に錦秋湖の水位を上げる年で、紅葉した林が湖に沈みます。
その紅葉すれすれの錦色の湖をガイドさんと共に体験できるツアーです。
10月20日~11月4日の2週間限定で、雪の降る直前の優美な景色が繰り広げられます。
カヌーツアーと言っても、ゲスト自身で漕ぐことはほとんど少ないので子供からお年寄りまで楽しめるそうですよ。
ツアーの注意事項に「※美しすぎての気絶にご注意ください」と(笑)これも行きたい!
カヌーツアーの詳細はこちらから
写真:錦秋の水没林カヌーツアー、イメージ。10年に1度だけ現れる景色はどんなものだろう?
今年の西和賀辺りの紅葉は、10月20日〜11月上旬頃。ピークは10月の最終週くらいになるのでは?との事です。
ツアー開催地の近くには、湯川温泉があります。
ツアーの集合場所からは車で約30分くらいの所になりますが、1,000年続く湯の歴史と、弱アルカリ性の泉質は、保温効果と美肌効果があるとされ、お肌をツルツルにしてくれます。
巨樹を巡り心を整えた後の温泉で、身体も整えるっていいですね。ツアーでの心地よい疲れを解放できそう!
こちらの美味しいものといえば、西和賀のブランド山菜、西わらびのデンプンを使用したワラビ餅がオススメです。町内3つのお菓子屋さん(お菓子処たかはし、工藤菓子店、団平)のつくるワラビ餅はどれもとても美味しく、ワラビ餅の概念が変わるかも?
これらのツアーを主催している「ネビラキ」さんですが、ユニークな名前だと思ったらこれは、雪国で春先に見られる現象「根開き」から来ているそうです。
木の周りを太陽に照らされた輻射熱で円形状に雪が溶けていく現象だそうで、まだ知られていないスポットを町外のゲストとともに発掘していくことで、西和賀のまだ知られぬ美しさを再発見していきたいとの事。
これからも、素敵なツアーが誕生しそうですね。
(まとめ・文:すてぃーぶん 記事確認2019年9月)