新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大によって、温泉旅館・ホテルなどに大きな影響が出ています。不動産投資法人（J-REIT）として温泉・温浴関連施設に投資している大江戸温泉リート投資法人（https://oom-reit.com）の今西文則執行役員に、全4回にわたってお話を伺いました。
第2回は、前回につづけて新型コロナウイルス感染症の感染拡大によってどの様な影響が出ているのか伺った後に、業績見込みについて伺います。
大江戸温泉物語 伊勢志摩
Ｑ.東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏4都県及び北海道を除いて緊急事態宣言が解除されましたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策として、どの様な取組みをしていますか？
Ａ.大江戸温泉物語グループの施設においては、大江戸温泉リートの保有施設も含めて、ホテル館内に消毒液を設置、ドアノブやエスカレーターの手すりなど共用部分の拭き取り消毒の実施、必要に応じて従業員のマスク着用、レストランでの手指消毒剤やビニール手袋の用意、トング等の交換頻度のアップなど、衛生管理の徹底をしているほか、カラオケサービス等のご提供を見合わせています。
Ｑ.これまでのビュッフェスタイルや大浴場は同じように継続できるのでしょうか？
Ａ.営業再開後は、これまでの感染防止対策を継続するほか、大江戸温泉物語グループではさらなる対策を検討していると聞いています。私の推測ですが、例えばレストランにおけるバイキング方式の一部変更や、混雑を避けるための大浴場等の入場制限などが考えられるかもしれません。
大江戸温泉物語 伊勢志摩
いずれにせよ、お客さまが安心して大江戸温泉物語グループの施設の特徴である、温泉、食事、部屋、エンターテインメントなどを楽しんでいただけるように、ポストコロナの新しいスタイルに挑戦していくことになると思います。
Ｑ.新型コロナウイルス感染症の感染拡大による業績への影響はどの程度あるのでしょうか？
Ａ.大江戸温泉リートの賃料収入は、その９割以上が固定賃料となっています。テナントの大江戸温泉物語グループの業況は短期的には厳しいですが、固定賃料は確保できる見通しです。しかし変動賃料については、３月以降に稼働率等が大きく低下した後の業績が反映される2020年11月期と2021年5月期については厳しい状況が見込まれます。
Ｑ.今回の新型コロナウイルス感染症がもたらしうる、あえて将来に向けたポジティブな要素があると思われますか？ あるとすれば何でしょう？
Ａ.今回の出来事は、温泉温浴や宿泊、旅行のほか、エンターテインメントやアミューズメント、スポーツなど、いわゆる余暇活用の在り方について消費者の意識が変わっていくきっかけになるのではないでしょうか？ つまり、こうした感染症への安全意識の高まりや、都市部における密集度の高い場所に対する懸念などが考えられます。
伊東ホテルニュー岡部
しかし一方で、余暇時間を楽しく、充実して、そして人とのコミュニケーションを大事にして過ごしたいという人々の思いや、モノ消費からコト消費へというトレンドは変わらないでしょうし、インバウンドについてもグローバル化の流れとともに止めることはできないと考えています。
そうした時に供給サイドから、新たな人々の嗜好やライフスタイルに合わせた温泉施設など、余暇活用施設の新規業態が生まれてきたり、進化を遂げたりするのではないかと期待できます。それはすなわち、大江戸温泉リートにとってスポンサーの大江戸温泉物語グループのみならず、幅広い投資対象が生まれてくることを意味するのではないかと考えています。
Ｑ.まず、大江戸温泉リートの決算期について教えていただけますか？年1回の決算を行う株式会社と不動産投資法人は異なるのですよね？
Ａ.不動産投資法人、すなわちリートは日本の場合多くが半年決算となっています。大江戸温泉リートも半年ごとで、毎年5月末日、11月末日に終了する半年間が決算期となっています。
伊東ホテルニュー岡部
Ｑ.配当金が半年ごとに年2回受け取れるということですか？
Ａ.そうですね。株式会社でいうところの配当金が不動産投資法人（リート）でいう分配金にあたりますが、保有を続ける投資主（いわゆる株主）の皆さんは分配金を半年ごとに年2回受け取れることになります。
Ｑ.当期(2020年5月期)の業績見込みに変更はありますか?
Ａ. 2020年5月期については未だコロナの影響が大きく変動賃料に反映されないため、1月21日に開示した業績見込みから大きな変動はないと予想しています。
Ｑ.翌期(2020年11月期)の業績見込みはどうでしょう?
Ａ.2020年3月23日に、2020年11月期の当初の業績予想を修正し、変動賃料がゼロとなると想定して投資口1口当たり分配金予想を15.7%引き下げ、1,973円としました。
大江戸温泉物語 あたみ
Ｑ.現状の投資口価格（＝株価）について、どの様にお考えですか?
Ａ.投資口価格については、市場が決めるものであり、私の立場からあまり言うことは差し控えたいのですが、大江戸温泉リートは固定賃料の構成比が高く、安定的な賃料収入とダウンサイドに強い特徴を持っていると思います。そういう観点では分配金利回りは、他の銘柄に比べてもう少しリスクプレミアムが低下する、すなわち投資口価格が上がってもよいのではないかと個人的には思っています。
また、昨今のリート全体の投資口価格の推移は、リートの投資家となる層がまだまだ拡がりを欠いているせいもあり、一時パニック的な売りにさらされたため大きく下落しました。いわば投資理論等からは想定できないレベルまで下がったように個人的には思っています。
早期の回復が望まれるところですが、我々のところも含めて、先行き不透明な中、各銘柄が積極的に情報開示をしていくことが大切であると思います。
大江戸温泉物語 東山グランドホテル
第3回に続きます。第3回は大江戸リート投資法人の戦略についてお話を伺う予定です。
（取材・執筆・制作：Vermiliおん）
