部屋にこもる時間が多くなりました。部屋で何をしているかと言えば、だいたいパソコンに向かってカチカチ。こんな時間が続くと、目・肩・腰は疲れてくるわ、外の空気が吸えないで憂鬱だわで、何も考えずに温泉に浸かってボーッとしたくなります。
こういうとき、近場の温泉や銭湯に行くのももちろん良いのですが、どうせ行くなら、憂鬱な日常をほんの一瞬忘れられるような場所が良いです。でも、あまりに遠いと、時間がかかる、お金がかかる……と、これまた別の問題も生じてきてしまいます。
そこでちょうど良いのが、「東京から100キロ以内の距離にある温泉」です。100キロくらいの距離であれば、ドライブを兼ねて半日~1日で帰って来られ、十分な逃避行気分も味わえます。この場合、必ずしも有名な温泉地でなくて良くて、できるだけ町に個性があり、ローカルで、独特の慣習があるところだと良いですね。
こういう町では、肩肘をはらず、普段はなかなか味わうことができないその町にしかない時間、そして温泉をゆったり過ごすことができます。
そんな「東京から100キロ」でドライブで行ける温泉を複数回にわたってご紹介していきたいと思います。一発目の今回は栃木県佐野市です。
「え? 佐野って、別に温泉とか有名じゃないよね?」という声も聞こえてきそうですが、良いんです。名物の佐野ラーメン、栃木ならではの買い物もセットで楽しめて、軽~く温泉に浸かることができれば……。
東京から車で佐野に行く場合、首都高速から東北道に入り北上して、約90キロ前後を走ります。渋滞がなければ約1時間半で着いてしまう佐野なのですが、インターを降りるとそこはかなり違うローカルな町。綺麗な山があるわけでもなく、取り立てて自然が豊かであるわけでもないのですが、独特の文化があります。
まず、有名なのが佐野ラーメン。市内には無数のラーメン店が存在し、その大半は青竹打ちの麺を使っています。スープは各店によって異なりますが、いずれもシンプルでクラシカルなラーメンが多く、東京ではなかなか味わえない美味しさです。
そして、佐野プレミアム・アウトレット。土日はこのアウトレット目当てで近県のナンバーのクルマが勢揃いするほど人気のようです。
また、佐野市は栃木県の南部に位置し、近隣には群馬県、埼玉県、茨城県の境もあり、この4軒の豊富な食材を安く一気に買える道の駅、スーパーマーケットも豊富です。野菜、肉、魚などはもちろん、前述の佐野ラーメン用の生麺なども簡単に買うことができます。休養しに行ったついでに、お土産も兼ねた数日分の食材を、東京よりもはるか安く買うことができるというわけです。なんて合理的!
そして、肝心の温泉。佐野市内には数軒の温泉施設が存在し、温泉マニアの方ではよく知られた「温泉スタンド(無料の温泉自販機)」もあります。これは話のタネに是非立ち寄ってみて欲しいですが、筆者の場合、佐野に行くのはあくまでも休養。
やっぱりゆっくり温泉に浸かるほうを優先してしまうわけですが、佐野で最も行きやすく、ローカル感もあり、コストパフォーマンスに優れながらかなり充実している施設が「佐野やすらぎの湯」です。
アルカリ性単純温泉、高濃度の炭酸ガスを溶け込ませた炭酸泉が名物ですが、この他に日替わり風呂、電気風呂、ストロングバス、つぼ湯など複数の風呂があります。また、遠赤外線サウナ、ミストサウナもあります。
これらを使い放題で入浴料はなんと平日500円、土日祝600円。さらに施設内には、前述のような、佐野市ならではの食材を使った食堂や、これまたコストパフォーマンスに優れたマッサージなどもある充実ぶりです。
いわゆる日帰り温泉は、モダンな雰囲気だったり、妙にかしこまった雰囲気を打ち出すのところが多いですよね。これらの要素も、ある意味では癒しの効果があると思います。しかし、ここ「佐野やすらぎの湯」にはそういう雰囲気はなく、むしろローカルで飾り気のない、でも、ここもまた親しみやすくて妙に落ち着くんですね。お客さんもほとんどが地元の人たちで、観光客はほぼゼロ。日常の時間から気張らずにスライドして浸かることができるという、かなり貴重な温泉施設ではないかと筆者は思っています。
実は筆者は、ここ数ヶ月、この「佐野やすらぎの湯」目当てで、佐野市に週イチで通うようにもなりました。あちこちの日帰り温泉に通う人なら絶対にわかっていただけるであろう「佐野やすらぎの湯」の素晴らしさ。ぜひ、東京での仕事に疲れた方は、ワンデイトリップも兼ねて訪れてみてはいかがでしょうか。
(まとめ・文:松田義人、制作:Vermiliおん)