西郷隆盛(さいごうたかもり)が愛した鹿児島県日当山温泉(ひなたやまおんせん)。
ノアコーヒーはのどかな天降川(あもりがわ)ぞい、まさに西郷どんが釣りを楽しんだと思われるあたりに小さな店を構えている。
ノアコーヒーの店主の東さんは、コーヒーを愛するあまり、鹿児島県・奄美諸島(あまみしょとう)の沖永良部島(おきのえらぶじま)で国産コーヒー豆を作る活動までも行う。
決して行きやすいとはいえない離島のコーヒー園に年に何度も行き来するなどまさにコーヒーに情熱を傾けている人だ。
残念ながら沖永良部コーヒーは、コーヒーの木の本数が現在100本と大変希少なので、ネット販売の年間定期購入の中に入るのみではあるが、ノアコーヒーの店舗では世界中の豆を遠赤外線焙煎の少量焙煎にこだわった美味しいコーヒーを味わい、また購入することができる。
中にはペルーや東ティモールといったあまり見ない国のもの、またオーガニック豆も扱っている。
コーヒーを焙煎すると油が出てくるが、その油が酸化すると美味しくなくなる上に、体にもよくない。ゆえに油の酸化が遅い遠赤外線焙煎を採用し、少量を毎日焙煎しているという。
取材のために訪れたとき、残念ながら東さんはまさに沖永良部出張中で不在だったが、スタッフの方が焙煎前に豆を広げて丹念に豆を一粒ずつ選り出していた。「欠点豆」をチェックして一粒ずつ取り出しているんだそう。
同じようなシーンを、漫画「美味しんぼ」で見たことがある。「美味しんぼ」ではお米だったと思うが、要は大きさがそろうことで、火の通りを均一にしようという、美味しさを極めるための根気のいる行為だ。
店内にはコーヒー豆の特徴のマトリックスがある。これを見て、好きな味を相談するのも楽しい。
お店では、個性的な深煎豆に出会うために、週替わりで1種類を深煎りしてみるなどの試みも行っている。
コーヒーを淹れているところを見せてもらった。コーヒーはネルドリップで丁寧に1杯ずつ淹れる。
十分に蒸らすので、きれいなふっくりとしたドームができる。……コーヒー好きには魅惑的な香りが漂ってくる。
まだ十分にコーヒー液が滴っている途中で、終わり。素人には「え~もったいない……」と思うほど残っている。
「後半は、えぐみや雑味が出るんですよ」とのこと。
試しにお客様用(私のために淹れてくれたもの)と、残り液を試させていただいた。
たしかに、香りが全然違う。味のほうも、美味しい湧き水と、ちょっと癖がある温泉水くらいの差があって驚いた。
席は天降川が見えるテーブルが1つ、奥にはグループでも大丈夫な空間もあり、ノマド用のようなおひとり様席も1つだけあるのが面白い。
コーヒーのおともには、ケーキやワッフル、アイスなどのスイーツがあるので、ケーキと一緒に「贅沢ブレンド」を味わう。
カップは地元の隼風窯のものを使用している。
香りから癒される。水がいいせいなのかよけいに美味しく感じる。
ここ日当山温泉は、霧島山系からの美味しい水にも恵まれているのだ。自宅で自分で淹れて飲むものとはまさに別物、まさに旅で出会う美味といえる。
絵葉書のように1つずつ選べるドリップコーヒー。
温泉地では地酒・地焼酎と同じように、美味しいコーヒーに出会うのも、いいなと思う。
ノアコーヒーと日当山温泉の組み合わせも、もうちょっと近ければ通いたいくらい気に入った。
http://cafe-noah.com/ 鹿児島県霧島市隼人町内1449-1 TEL0995-50-1646 定休日 毎週火曜日・祝日 営業時間 11:00~18:00