新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大によって、温泉旅館・ホテルなどに大きな影響が出ています。不動産投資法人（J-REIT）として温泉・温浴関連施設に投資している大江戸温泉リート投資法人（https://oom-reit.com）の今西文則執行役員に、全4回にわたってお話を伺いました。
第3回は、投資法人の戦略について伺っていきます。
大江戸温泉物語 あたみ
Ｑ.今後の温泉旅行について、どの様な変化が起こりうると考えますか？
Ａ.コロナの危機的な状況が過ぎても当面は、消費者は宿泊先の衛生管理状態を重視するようになるでしょう。また、交通手段についても自動車や密集度に配慮されたバスなどの利用が支持されるかもしれません。要は供給側の工夫が望まれるところです。
長期的には都市部の人口密集地ではなく、いわゆる温泉地のような自然環境の良い場所がより好まれるのではないかと思います。また、既にこれまでにも起きてきたことですが、団体旅行から個人旅行へのシフト、家族など親密な人たちとのグループ旅行が増えるでしょう。
大江戸温泉物語 土肥マリンホテル
さらに、温泉がもともとから有している「健康維持・湯治」といった機能もよりクローズアップされるかもしれません。これらは、海外からのお客様についても言えることでしょう。温泉温浴の提供者は、ますます創意工夫が求められます。
Ｑ.あえて温泉にフォーカスした理由は何でしょうか？ 今回のような感染症といった出来事を経験したうえでも、今後もフォーカスしたいという理由はありますか？
Ａ.温泉は、日本人の余暇活用を代表してきた伝統に根ざしたものであり、長期にわたって潜在的なものも含めて需要が大変安定していること、さらにインバウンドに向けてもアピールしつつあるということが大きい理由です。
ですから、消費構造がモノの消費から時間消費、コト消費ともいわれる体験型消費へ重心が移っていく中で、その代表的なものとして温泉があると考えました。そして日本は各地に温泉があり、投資対象として全国各地に展開できる地理的な分散が効かせやすい資産タイプであることが大きいです。
大江戸温泉物語 かもしか荘
今回のようなパンデミックといった出来事を通じて、温泉温浴の提供の仕方や施設の安全管理などへの改善・工夫の要請は高まるでしょうが、伝統文化ともいえるように人々のライフスタイルに定着してきた温泉は、そのニーズが絶えることはないと考えています。
むしろ、かつて昭和の時代の温泉街が平成以降大きく変貌を遂げたように、人々の需要をとらえる新しい業態が生まれてきて、我々の投資対象も尽きることはないと考えています。さらにアジアの人たちを中心として海外からのお客様の温泉への志向は、まだ始まったばかりであると考えています。
Ｑ.今後のインバウンド需要について、どの様に考えていますか？2021年に延期された東京オリンピックについて、期待感はありますか？
Ａ.新型コロナ感染は、今後第２波、第３波も想定され、かつ海外における感染はまだまだこれからという地域もありますので、インバウンドの需要回復には、国内客よりも少し長めの時間を要するのではないかと考えています。
鬼怒川観光ホテル
ただ、東アジア、特に中国や韓国、台湾などは比較的早く制御ができてきているようにも思われますので、そこには期待ができます。
東京オリンピックについては、現時点で確実に実施できるという保証はありません。ですので、それを前提とした期待値を経営上織り込むべきではないと考えています。
Ｑ.大江戸温泉物語ホテルズ＆リゾーツが運営する旅館や日帰り温泉は、どうしてリートの投資対象に相応しいのですか？
Ａ.リートは、各期の安定的な分配金を通じて、長期保有される投資家にきちんとしたインカムゲインを得ていただくという、ミドルリスク・ミドルリターンの金融商品です。ですので、分配金の原資となる賃料収入が安定していること、言い換えれば固定賃料を中心にできるような稼働の安定した施設が必要です。
大江戸温泉物語 かもしか荘
大江戸温泉物語グルーブの施設は今回のコロナ危機を除けばいずれも高稼働かつ安定的なパフォーマンスを示してきており、相応しいと考えています。
さらに、リートの投資家に長期的なアップサイドを提供するうえでも、個人消費の中でマーケットの成長が見込める貴重な分野である体験型消費の代表的なものでもありますので、相応しいと考えます。
大江戸温泉物語 あわら
第4回に続きます。第4回は第3回に続いて投資法人の戦略を伺い、加えて現状での取り組みについてもお話を伺う予定です。
（取材・執筆・制作：Vermiliおん）
