山形県上山市のかみのやま温泉の老舗旅館・日本の宿 古窯がこの2019年4月に宿泊棟のうちの一つ「雪の館」のフルリニューアルを完成させました。新しい客室は眺望のよい温泉付き。素敵な仕上がりになった出来たてホヤホヤのお部屋の魅力を現地取材してきました!
写真:日本の宿 古窯の展望大浴場と露天からは素晴らしい眺望が望める
かみのやま温泉の葉山地区にある日本の宿 古窯は、旬刊旅行新聞による「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」のTOP10に44年も連続で選ばれ続けている、いわば日本を代表する温泉ホテルの1つです。
創業1951年、あの石原裕次郎さんがヘリで(!)泊りに来たという逸話※を持つほか、数多くの著名人・有名人が訪れている超有名宿といっても過言ではありません。
※人気刑事ドラマ「西部警察」の撮影の一コマです。
全136室、そのうち今回のリニューアルでは、建築が一番古い雪の館の32室を30室として全面的に改装しました。
その改装がなんとも素敵な仕上がりなんです。実は小宿&和室好みの中の人もすっかり魅了してしまった出来栄えを紹介していきましょう!
和室×北欧風の明るいお部屋からは蔵王連峰も
私が泊まらせていただいたのは613号室。お部屋入り口からして、素敵な佇まいです。古窯の名にちなんだお皿のモチーフに組子細工。ライティングもお洒落です。
ちなみに「古窯」の名前の由来は、敷地内から奈良時代の「須恵器」が大量に出土したことによります。古代の人も暮らしていた場所に建つお宿なんですね。
ドアをあけると新しい木の香り。ゆとりのある玄関に廊下の先には、ガラス窓ごしに露天風呂。お部屋に入ると……
まず、全面窓からの景色が素晴らしい!
青空の下、遥かに残雪をいただいた蔵王連峰を見渡すことができました。ちょうどこの日(4月19日)は桜も満開で、パノラマの景色の遠く近くに桜が咲いているのが見えます。
写真:お部屋からの眺め。遥かに蔵王を望む
そんな窓からの自然光をうけて、お部屋はとても開放的!
写真:613号室。蔵王を見渡す12畳の和室に、障子で仕切られたフローリングのベッドルームが
613号室は広い12畳の和室+ベッドルームの和洋室。和室にはゆとりがある配置でのソファセット、背後にはフローリングの寝室があります。ベッドはワイドサイズのシモンズベッド。
写真:和室の背後にあるベッドルーム。木のぬくもりに落ち着いたセンスのライティングで癒しの空間となっている
家具や建具の木の色を明るめの色で統一しており、和室×北欧風の爽やかな雰囲気になっています。今回のリニューアルのターゲットは30~40代の個人の女性客とのことですが、たしかに女性はこういう雰囲気に心癒されますよね。
また、和室と寝室と障子で区切れるところに、いろいろなお客様のニーズを「わかってる」間取りだな、と感じました。
写真:613号室の写真いろいろ。浴衣は各サイズがあらかじめ引き出しに用意されているので好きなものを。ベッドサイドにはUSB電源。ライトは明るさを調節できるようになっているのが嬉しい
なお、仕切りの障子と窓の障子をあけ放てばベッドに寝ころんだまま、青空を眺められます。東向きなので、朝日が自然な目覚めを誘うのも素敵です。
雪をテーマに細工や小物にもこだわる
ベッドルームのしつらえが、私の一番のお気に入り。
組子細工で雪の結晶を埋め込んであるのがなんとも可愛い。「雪の館」だけに雪をモチーフにしているのだそう。
写真:左はエントランスのお皿と組子細工。右はベッドルームにある組子細工の雪のモチーフ
リズム感がある格子に、ベッドサイドには優しいランプ。やっぱりベッドサイドのランプは必須ですよね!加えて明るさも調節できるのがありがたい。
お部屋の灯りにオフィスっぽい白色の蛍光灯は一切使ってありません。優しい色の灯りが際立つ夜もまた雰囲気がいいんですよ。
また、これまた心惹かれたのが茶器などの小物。
無垢木の茶筒に、ころっとしたフォルムの鉄瓶風の急須に粉引きの湯のみ茶碗。シンプルで可愛いこの茶器たちは、地元にこだわった工芸品なんです。
写真:木の重箱に入った山形の工芸品の茶器がおしゃれ
急須は山形で有名な鋳物職人の手で作られた伝統工芸品、茶碗は平清水焼で名前も「残雪」。これも雪をテーマとしたお部屋にぴったりですね。
眺望のよい温泉付きで、温泉を存分に堪能!
雪の館のお部屋の最大の特徴は「温泉付き」であること。半露天風呂、開放できるガラス窓付きの内湯などお部屋によって変わりますが、私が泊まったお部屋は半露天風呂付です。
写真:露天風呂。開閉できる障子が目隠しにも気温調節にも便利だ
目隠しの障子がついていますが、お湯に身を沈めたあとで障子をあければ……
ちょうど見ごろの桜が眼下にありました。南からの旅人には雪が残る蔵王と桜のコラボにひときわ旅情をかきたてられます。
写真:613号の露天風呂よりちょうど見ごろの桜を見下ろすことができた
かみのやま温泉の泉質は、ナトリウム・カルシウム・塩化物・硫酸塩泉でPH8.1。透明で柔らかいお湯ですが、蒸発残留物が2261㎎あるれっきとした療養泉です。
写真:露天風呂に注がれるのはれっきとした温泉
硫酸塩泉は、日本温泉協会によると、切り傷や皮膚の乾燥によいとされているので、お肌のうるおいを守り、美肌をつくる湯といってもよいでしょう。
自分専用の美肌の湯に浸かってのこの眺め。贅沢この上ありません……。
さらに、夕食後にはちょうど「ほぼ満月」が蔵王の上を照らすのが見えました。薄闇の中に夜桜も……。
昼間食べた「夜桜プリン」の世界を、はからずも露天風呂で満喫したのでした。
https://onsennews.com/news190425_yamagata-purin/
【山形】かみのやま温泉に賞味期限10分の山形生プリン!?夜桜バージョンはほわほわ美味だった…●温泉カフェレポ
写真:洗面所の灯りも、顔がきれいに見えるライティング。使い勝手重視の深めのシンクもありがたい
趣向の違う2つの大浴場に楽焼画廊。館内の魅力もいっぱい!
お部屋の露天風呂だけでなく日本の宿 古窯では大浴場も魅力的!
1階と8階に大浴場があり、~1:00と4:00~で男女別が入れ替わります。
8階の展望大浴場からは、広いガラス越しに蔵王などの山々を眺められます。露天風呂はさらに開放感が加わります。ただし生け垣が高めなので、湯舟に浸かった状態になると蔵王は見えません。ときどき湯舟のふちで休みながら絶景も堪能したいですね。
1階の大浴場「紅花風呂」で面白いのは、かまくらサウナという、マイナス5℃の低温サウナがあること。高温サウナとの交代浴が新鮮です。これは時間があったら何往復もしたかった!
湯あがりには、楽焼画廊の鑑賞がおすすめです。
古窯を訪れた著名人たちが描いた絵皿がずらりと並びます。なにしろ創業から70年近い蓄積なので、懐かしのあの人、最近のこの人まで「こんな人も来てたのか~」と興味は増すばかり。
写真:「この人こんなセンスがあるんだ~!」と有名人の違った一面を発見できる楽焼画廊
名前だけ見てても飽きないほどの数があるのですが、絵心というかセンス・人生の厚みが絵皿にくっきりあらわれている様子に、興味はつきず、取材でなければもっとゆっくり見たかった!
なお、自分も絵皿を描いてみたいと思ったら体験もできます。21時までに描けば翌朝までに焼いて、チェックアウトまでに渡してもらえるそうですよ。
写真:古窯の隠れた名物「トイレ」。個室ごとに色が違うトイレにはなんとテレビ付!
夕食は個室食事処「ぎおん」にて。この個室食事処は4月13日にできたばかりなんだとか。
写真左:2019年4月にできたばかりの個室食事処「ぎおん」 写真右:オリジナル純米酒「古窯」。米沢の新藤酒造店に特注
郷土の味を活かしたコースをいただきます。山形名物の芋煮がボリュームたっぷりで美味。
写真:山形名物の芋煮。そぼくな甘辛味と芋のほっくり感が絶妙!
山形和牛のすき焼きも、ごま味噌だれに温泉卵をつけていただくという、まろやかなコクにお肉が負けてないのが印象的でした。
写真:この日の夕食より
名物の漬物数種といただく「つや姫」も、胃袋もう1つあったらお代わりしたい!美味しいご飯です。ご飯好きだったら、最初から持ってきてもらって、料理と一緒に食べるのもいいと思います!
写真:「つや姫」のご飯と漬物。さくらんぼの漬物が彩を添える
翌朝は、展望大浴場からバイキングの朝食を経て、お部屋の朝露天を存分に堪能しました。
朝食バイキングは、山形名物の「だし」からフレンチトーストまで品数の多さに圧倒!HPには54種類とありましたが、もっと多かったと思います。
明け方に雨が降ったのですが、朝食を終えて朝風呂に入るころには青空も戻り。ひときわ美しい桜を眺めての花見露天に蔵王見露天。
……帰りたくないなあ。連泊だったらよかったのになあ……と「雪の館」をギリギリまで堪能しつくした今回の取材でした。
(取材・文:おんせんニュース中の人)
写真:613号の露天風呂より月に照らされる残雪の蔵王連峰